暗闇だから、怖くなかった




「これから長田さんもいらっしゃるので、二人きりってわけにはいかないんですけど、良いですか?」


 ちょっとだけ意地悪を言ってみる。数ヶ月も放置されて忙しいとはいえ、それなりにヤキモキしていた私の気持ちを知りなさい?


『……長田さんと二人きりになるんですか』

「ええ、そうですけど?」

『ダメです!』


 思いのほか大声が返ってきてびっくりした。受話器から耳を離してしまったけど、すぐに耳に当て直す。


『すみません驚かして……でも二人きりはダメです!』


 すぐ向かいますから、と電話を切られ、私はちょっぴり罪悪感を抱きながら熱燗の準備に勤しんだ。

 そうこうしているうちに長田さんが来店して、待ってましたとばかりに熱燗をお出しする。長田さんは一杯呷ると、噛み締めるように「これよ、これ!」と笑った。


「ではちょっと早いけど、女将さんの退院を祝して!」


 乾杯! と私は水の入ったグラスを掲げて笑う。そのタイミングで引き戸がガラッと開いた。