「そうですね、あのときはきっとそれが一番だった」
「……」
「それでも、私は嬉しかった」
だから、顔を上げてください。
知らず知らずのうちに俺は下を向いていたらしい。キャラメル色のテーブルに情けない顔が映ってる。
「私の気持ちに寄り添ってくれたような気がして、救われたんです」
俺は徐に顔を上げて高槻さんを見た。慈愛に満ちた眼差しが、俺をやんわりと包んだ。
「だから、もう自分を許してあげて」
視界がぼやけて、袖で乱暴にぬぐった。そしてどうにか口の端を吊り上げる。
「お話できて良かった」
「私もです」
それから俺たちは色んな話をした。今までのこと、仕事のこと、活動のこと。俺が今は警備員をしていると話せば、人を守る仕事が天職なんですねと微笑んでくれた。こそばゆかった。
「実は私、三ヶ月後に結婚するんです」
「そうなんですか、おめでとうございます!」
良かった。彼女は今、間違いなく幸せだ。



