これは夢じゃないよな。
頭の芯が痺れたような気分で、指定されたカフェのテラス席に座っている。返信があっただけでも信じられない気分なのに、こうして会えることになるだなんて思いもしなかった。
いや、会って謝罪したいと書いたのは確かに自分だ。しかしそれは俺だけの願望であって、それを相手の気持ちを考えずに押し付けるのはあのストーカーと変わらない。
たとえ返事が来ても、お気持ちだけで結構です、とかそんな感じだと思っていた。それが。
「榊原さん、ですよね?」
「! はい……!」
後ろから聞こえてきた声に、俺は掠れた声で立ち上がりながら振り返る。
「お久しぶりです」
記憶と全く違わない高槻さんがそこにいた。上品な焦茶のトレンチコート、ミルクココアのようなマフラー、長かった髪はばっさりとショートヘアにしている。
「その、ええ、本当にお久しぶりです」



