「いいなぁ、ドラマみたいじゃん」


 あの事件から四日後、私はカウンターで友人の葉月に警備員さんとの出会いを語っていた。語りながらも食器を拭く手は止めない。


「その警備員さん……えっと、榊原さんだっけ」

「うん、榊原洸平さん」

「どう? ここの料理への反応は?」


 悪戯っぽく両目を三日月にした彼女に、私はにんまりと返してみせた。


「うちの看板料理だよ、受け取ってもらえたに決まってるじゃない」


 拭いた食器を戸棚に戻しながら、傘を返しに行ったときのことを思い出す。警備員室まで直行し、運良くあの日に一緒だった同僚の人に呼び出してもらったのだ。彼の名もそのときに聞いた。

 丁寧に畳んだ傘を渡せば、安物ですから、と恐縮する彼に私は首を横に振って「警察から連絡はないですか?」としおらしく問いかけた。榊原さんは自分の発言を覚えていたようで、優しく笑って頷いた。


「大丈夫ですよ、不安にさせてしまいましたね」

「そうですか、良かった」