押し黙ってしまった私に自分の予想が当たったと確信したのか、警備員さんは気遣わしげに声のトーンを落とした。
「よければ俺の貸しましょうか?」
「えっ」
思いがけない申し出に、私は飛び上がって喜びそうになるのをどうにか抑えた。それでも声には混ざっていたかもしれない。ほら見て、目を瞬かせて唇を引き結んでる。
「いえ、その……ありがとうございます。すぐそこの百均で買おうと思ってたから、びっくりして、それで」
がっついてる女だと思われたくなくて、言い訳を並べ立ててしまった。気づいた瞬間に口をつぐんでも後の祭り……どころの話じゃない。駄目だ、終わった。
さよなら、名も知らぬお兄さん……私が勝手に落ち込んでいると、警備員さんは「なら丁度良いですね」と少し弾んだ声で返してきた。
「俺のも百均の傘なんです」
その言葉の意味を考えずに、私は「微笑んだ顔も素敵だなぁ」なんてぼんやりしていた。



