暗闇だから、怖くなかった




 俺はもうそれしか言えなかった。


「この悪いドラゴンなんですけど、たぶん私の祖父のことです」

「お祖父さんが守ってくれてたんですね」

「ええ、昨年亡くなったんです」


 彼女は机の上で指を組むと、メールを送られるようになった経緯を話してくれた。


「それをどこで知ったのか、メールが送られてくるようになって」

「メールはブロックしてなかったんですか?」

「昔使ってたもので、ほったらかしにしてたんです」

「それじゃあ、気づくのは遅れたでしょう」

「そうですね、送られるようになった三ヶ月後に気づきました」


 彼女は別れの事情まで話してくれた。元彼氏の浮気で別れたが、その数ヶ月後に付き纏われるようになったと言う。

 家にまで押しかけてきたが、祖父が追い返して事なきを得、平穏に暮らしてこれた。

 しかし祖父が亡くなって、事態は急変する。