暗闇だから、怖くなかった




 彼女は、元々は警察署に相談に行こうとしていたそうだ。だが俺の対応を見て、思い切って相談先を変えたらしい。


「それは……ありがとうございます?」


 気恥ずかしいのとどう返せば良いのかわからなかった。のでお礼を言ってみる。高槻さんは困り眉で笑って、「相談させてもらっていいですか?」と持ってきた鞄を掲げてみせた。

 俺は交番の中へと彼女を促すと、パイプ椅子を勧めた。ギィと軋む音を背に、俺も調書を取るため椅子に腰掛けペンを手にした。


「これ全部メールですか」


 鞄の中身を見た俺の第一声がこれだ。

 百科事典も顔負けの厚みをした紙束がドサッと置かれた。若干慄きつつもパラパラめくって確認すると、送信者や時間が記されたメールの数々だった。


「はい、全てメールです」

「内容ですが……えーっと、その……」


 俺はまず一枚目を確認した。脅迫の文言が一言でもあればそれで動ける。