私たちは警備員室へと向かっていた。ショッピングモールはさっきの騒ぎなんて無かったように活気に満ちている。
元々は私もその中の一人で、雑貨屋に行ってお祖母ちゃんや葉月へのクリスマスプレゼントを探しているはずだったのに。
視線は足元のパンプスに移った。シンプルで飾りっ気のない愛用の靴は、どんなシチュエーションにも合うタイプで三年ほどの付き合いになる。
「先ほどは、お怪我はありませんでしたか?」
降ってきた柔らかい声に、思わず顔を上げた。黒い真珠のような瞳を無防備に直視してしまって、また喜びと緊張が頭をもたげる。
「いえ、全然」
「良かった……でも傘は──」
その言葉に左手を上げる。スカイブルーの傘は、その細い身体を折り曲げたままだ。
「ひったくりは捕まったし、構いません」
「でも……それ高そうじゃないですか?」
彼の指摘に「安物ですよ」なんて見栄は張れなかった。実際そこそこした傘で、しかも葉月からの誕生日プレゼントだ。



