病院での手続きを終わらせて、家に戻り〝臨時休業〟の張り紙を作る。店の戸口に張り出してひと息吐いた。

 仕込んでおいた材料はどうしよう。作り置きに使ってもいいけど限界がある。近所の人や葉月にあげてもまだ余るだろうし……。


「あれ、今日お休みなの?」


 振り向くと、長田さんがマフラーを巻き直しているところだった。


「申し訳ありません、祖母が急病でして」

「えっ、大丈夫なの?」


 長田さんはギョッとすると、張り紙に書かれている文言に目を向けた。


「大丈夫です、今日一日だけですから」

「そっか……風邪ひとつひかなかった人だから心配だねぇ」


 腕を組む長田さんに、私は無理やり口の両端を上げた。


「祖母ならすぐ元気になりますから」

「……そうだね。女将さん、すごく元気な人だもんね」


 長田さんは一瞬だけ表情を固くして、すぐに柔らかく微笑んだ。