もしかしたらお祖母ちゃんは私にも同じようなことを思っているのかもしれない。



──悠宇ちゃんにはね、自由に生きてほしいの。



 お祖父ちゃんの葬式が終わって、〈春涛〉の営業を再開しようと掃除をしているときだった。

 掃除がひと段落して、報告するために厨房に戻るとお祖母ちゃんが天気の話でもするように言ってきた。リズミカルな包丁の音に、途中で流しの水音が混ざる。


「お祖母ちゃん、栄養士や調理師の資格取りたかったのは私自身の意志だよ」

「そうね」

「このお店を継ぎたいのも私の意志だよ」

「それはお祖父ちゃんやお母さんに言われたからじゃないの?」

「……私ね、この〈春涛〉が大好きだよ」

「うん」

「だから、このお店がいつまでも続けばいいって思ってるよ」

「ありがとう」


 会話はそれきりで、お祖母ちゃんは私にお客さんへの料理を任せようとはしなかった。