お祖母ちゃんの声がはっきり聞こえた。決して大きな声ではなかったのに。


「可哀想って……本人が嫌がってたわけじゃないだろう」

「私たちがそう育てたからよ」

「好きな道に進んでいいっていつも言ってたじゃないか」

「あの子がパティシエになりたいって言ったら反対したでしょ」

「反対じゃない、楽な道じゃないって言っただけだ」

「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、少し休憩しよう」


 二人の言い争いを聞いていたくないて、わざと明るい声を出しながら仏間に入った。

 二人がギクリと身体を強張らせた。それも一瞬のことで、私のほうに振り向きぎこちなく微笑んだ。


「そうだな、悠宇ちゃんの言う通り休憩しよう」

「悠宇ちゃん、お見送りありがとうねぇ」


 和かな声でも私は安心できないまま、おにぎりとお茶を二人に出した。二人は美味しいと笑って褒めてくれてくすぐったい気持ちになったけど、腹の底にはお祖母ちゃんのあの言葉が燻り続けた。