そうだ。ぼんやりしてる場合じゃない。入院の手続きして、臨時休業の張り紙出さなきゃ。


「榊原さん、今日はありがとうございました」

「どういたしまして……あの、入院の手続き終わるまで見てましょうか?」


 ありがたい申し出に深く頭を下げる。


「ありがとうございます、すぐ済ませます」

「大丈夫です、この後は予定ないですから」


 もう一度頭を下げて、早足で受付まで向かう。このままお祖母ちゃんがお父さんやお母さんみたいに戻らなかったら……悪い想像ばかりが膨らんで、温まったはずの手がまた冷えていく。

 お父さんは私が四歳のときに亡くなった。仕事中の事故だったという。

 その頃の記憶はないけれど、お父さんは眠っているだけだと思った私は起こそうと棺桶の中にまで潜り込んでいたらしい。お母さんからそう聞いていた。

 そのお母さんも、私が大学を卒業する頃に亡くなった。