真っ白なベッドで眠り続けるお祖母ちゃんの腕に、透明な点滴が繋がっている。顔色は真っ白で、しばらく起きる気配はなかった。



──過労ですね。念のため今日一日だけ入院なさってください。



 担当の先生の声が右から左へ抜けていく。入院の手続きや店のことがあるのに、ひどくぼんやりして動けないままだった。


「お祖母ちゃん」


 零れた声にはどんな感情も乗っていなかった。そっと手を掛け布団に置いてみる。ドラマみたいに目を覚ましたりはしなかった。


「森さん」


 のろのろと振り向く。ペットボトルの温かいお茶を持った榊原さんが立っていた。


「持っているだけでも良いですから」

「え、あの、お金……」

「いいんです、こんな時ですから」


 お茶を手渡されて、その熱さに驚く。驚いたけど私の手が冷たすぎるだけだった。

 思い切って蓋を開け、一口啜った。胃がじんわりと温まって、身体全体があったかくなっていくような気がする。