暗闇だから、怖くなかった




 私たちは結局のところ唐揚げを買った。熱々の唐揚げを手に、近くにあるベンチに座る。

 紙包みから顔を覗かせた唐揚げはいい具合に茶色くて、衣はカリッカリに揚げてある。好みの揚げ方だ。


「熱っ」


 一足先に食べたらしい榊原さんから声が上がった。


「味はどうですか?」

「辛い」


 ハフハフ言いながら端的に感想を述べて、もう一度齧りついた。唐辛子を多めに注文していたけどどのくらい辛いんだろう。

 私は自分で頼んだ“サッパリ瀬戸内レモン味”を堪能しながら考えていた。口の中で広がる肉汁と、鼻から抜けるレモンの酸味に唾液が溢れる。


「森さんは? どうですか?」

「さっぱり」


 私もハフハフ言いながら返す。ここにビールを流し込めたら……。

 横目でチラッと榊原さんを見やる。ばっちり視線が合って、同じことを考えているのだとどうしてかわかった。


「……これからどうします?」

「……わかってるでしょう」


 ノンアルビールを飲める店を探すため、私たちは立ち上がった。