とは言え、本気で目移りしてしまう。一見うちでは出せないようなものでも何かしらのヒントになることはある。新メニューではなくても今のメニューの改善に繋がったりもするし……。


「……榊原さんは何が好きですか?」

「肉ですね」


 間髪入れずに答えが返ってきた。目は唐揚げ専門店に向いている。


「唐揚げに生ビールですか?」

「定番ですね、この組み合わせでハズレはありませんし」

「長田さん……うちの常連さんもそう言ってました」


 揚げ物とビールはやはり最強ということか。


「ノンアルってあったら嬉しいですか?」

「ノンアルか……嬉しいよりも助かるですね、気持ち的には」


 仕事や車の運転を始めとして、アルコールを飲めない事情がある人にとってはありがたい存在なのだと、榊原さんはお腹をさすっていた。


「お祖母ちゃんにノンアルの種類増やしてもらえるよう頼んでみます」

「お客さん喜びますね」