オフィスビルに囲まれた広場には、キッチンカーがひしめき合っている。ケバブ、タコライス、クレープ、唐揚げ専門店なんてのもある。とにかく激戦区というやつだ。
「すごいですね、ここまで多いと」
私がワクワクしていると、隣から感嘆の声が上がった。
「今日はありがとうございます」
「こちらこそ、誘っていただいてありがとうございます」
そう、私は榊原さんが来てくれたあの日にお出かけの約束を取り付けたのだ。
店の出入り口まで送ったときにお願いしてみたら、トントン拍子に日取りまで決まった。やっぱり脈有りだと思う……けど今は軽いジャブの期間だ。
冷静に、ジワジワと、徹底的に気持ちを掴まなくては……。
どこの悪党だ、と自分でツッコミを入れながら榊原さんのを盗み見る。
警備員の制服も凛々しくて素敵だったけど、私服姿も優しげでときめいてしまう。



