白くてきめ細かい肌、丁寧に巻いた髪、少し垂れた目尻とふっくらした唇。
そんな人に笑顔でお礼がしたい、と言われれば悪い気はしない。
「俺もあんなかわいい彼女に飯の差し入れしてほしい……!」
川口はカップ麺の蓋を開けると、箸で中身を乱暴にまぜた。泣き声混じりなのはたぶん気のせいじゃない。その背中が鬱々としているのも。
確かにあんな人が彼女だったら毎日楽しいだろう。勇敢で、料理が出来て、何より俺が大好きなら文句なしに幸せに生きていけそうだ。
──だとして、俺にそんな資格があるのか。
ふと、心の奥底で眠っている思いが浮かんできた。俺は立ち上がって帽子を被り直す。
「何だ、まだ休憩だろ?」
川口がカップ麺の汁を啜りながら聞いてきた。相変わらず食うのが早い。
「イベントあるだろ? 三階のあそこ」
「あー、あそこな、電気屋」
家電量販店が詰め込まれている三階のエリアはこの警備員室から遠い。イベントがある日は出来るだけ早めに巡回していた。



