返事を待っていると、薔薇はおばあちゃんみたいな声で返してくれた。

『体がかゆくてねえ。とても咲く気にならないんだよ。何かついていないかい?』
「体がかゆいそうです。何かくっついていませんか?」

 すると、リシャールはピンときた顔で、茎についていた白い粒を指さした。

「最近この粒が付くようになったんです! 虫みたいなんですけどよく分からなくて……」
「私は樹木に詳しくないんですよね。メグ、手伝ってもらえますか?」

 庭園の外に控えていたメグに呼びかける。

 彼女は、ジュディチェルリ家の庭のすみにこっそり家庭菜園を作っていて、とれた野菜をシュゼットに食べさせてくれていたので、侍女ながら庭仕事もできる。

 メグは、茎を観察するとすぐに「カイガラムシですね」と正体を教えてくれた。

「庭の花を弱らせる害虫です。手で取りのぞいて、綺麗になった茎に木酢液をかけると予防できますよ。庭師小屋まで行ってもらってきます」

 てきぱきと行動するメグに、リシャールは目を輝かせた。

「王妃様の侍女さん、お詳しいんですね」
「メグはすごい人なんですよ。私の大切な味方です。今のうちに虫を取りのぞいてしまいましょうか」
「はい!」

 シュゼットはリシャールと共に、薔薇についたカイガラムシを一つ一つ駆除していった。

 作業が終わるころ、メグが黒っぽい液体を持ってきてくれた。
 これが木酢液らしい。
 霧吹きに入れて茎にかけていくと、ツンとした刺激臭がした。

 全ての作業が終わったのは、おやつ時を過ぎて夕方にさしかかる頃だった。

「やっと終わりましたね」