鼻筋の通った横顔は、宮殿に飾られた賢者の像に似ている。
少し顔を傾けて立つ姿勢は棒のようにまっすぐで、頭一つ抜きんでた長身を際立てていた。この辺りの住人ではないと分かるのは、ラフな服装ですら礼装のように感じさせる高貴さがにじみでているから。
近寄りがたい雰囲気はあるものの、怖くはなかった。
並んだ本に注ぐ視線が温かいからだ。
読書家の目はみんなこうだ。
青年は、立ち止まっているシュゼットに気づいて、碧色の瞳をしばたたかせた。
「失礼。今よけます」
「いいえ、よけなくてけっこうです! 男性で恋愛小説を見ている方が珍しくて、じろじろ見てしまっただけなので……。こちらこそ失礼しました」
シュゼットは深く頭を下げた。
動いた拍子に傷跡が見えたらしく、青年はすぐに視線を外してくれた。
よく見ようと直視する人が多い中、見ないように配慮してくれるとは、いい人だ。
さりげない気遣いに、シュゼットの胸がトクンと騒いだ。
(この人も、ダーエの小説で胸を焦がしたりするのでしょうか?)
本棚を見るふりして横目で青年を観察していると、ガストン先生の声がした。
「ダーエさん。エリック・ダーエさん!」
(え……?)
少し顔を傾けて立つ姿勢は棒のようにまっすぐで、頭一つ抜きんでた長身を際立てていた。この辺りの住人ではないと分かるのは、ラフな服装ですら礼装のように感じさせる高貴さがにじみでているから。
近寄りがたい雰囲気はあるものの、怖くはなかった。
並んだ本に注ぐ視線が温かいからだ。
読書家の目はみんなこうだ。
青年は、立ち止まっているシュゼットに気づいて、碧色の瞳をしばたたかせた。
「失礼。今よけます」
「いいえ、よけなくてけっこうです! 男性で恋愛小説を見ている方が珍しくて、じろじろ見てしまっただけなので……。こちらこそ失礼しました」
シュゼットは深く頭を下げた。
動いた拍子に傷跡が見えたらしく、青年はすぐに視線を外してくれた。
よく見ようと直視する人が多い中、見ないように配慮してくれるとは、いい人だ。
さりげない気遣いに、シュゼットの胸がトクンと騒いだ。
(この人も、ダーエの小説で胸を焦がしたりするのでしょうか?)
本棚を見るふりして横目で青年を観察していると、ガストン先生の声がした。
「ダーエさん。エリック・ダーエさん!」
(え……?)



