すると、みんなピタリと動きを止めた。
 静かになった部屋で、シュゼットは目を閉じて耳を澄ます。

「今日のイヤリングさん、どこにいらっしゃいますか?」

 視界がさえぎられた分、感覚が研ぎ澄まされた。
 集中すると、それまでは気にならなかったいろいろな音が聞こえる。

 わずかに開けた窓から入る夜風がカーテンを揺らす音。
 侍女の誰かがわずかに身じろぐ音。
 廊下を巡回する衛兵の鎧が立てるカチャカチャという音――。

『ここよ! 早く拾いなさいよ!』

 甲高い声が足下から聞こえた。
 ぱっと目蓋を開けてドレッサーの下をのぞき込むと、ちょうど猫足の辺りに無くなったイヤリングが転がっていた。

「その足のところにあります」
「本当だ!」

 泣き顔だった侍女はキーキー騒ぐイヤリングを拾い上げて、ほっとした風に笑った。

「見つけてくださってありがとうございます、王妃様! 耳を澄ますだけで、どうして落し物の位置が分かったんですか?」
「それは……」

 シュゼットは、器物の声が聞こえる異能について話すべきか悩んだ。

 幼い頃は自分の異常性がわからなくて失敗した。
 正直に伝えることで人生が一変するだなんて、考えつく子どもの方が少ないだろうけれど……。
 当時と同じことをすればどうなるか、分別のついた大人になったシュゼットには分かる。

 王妃様がご乱心だと大騒ぎになるのは確定だ。
 メグのように、言われたままを受け入れて「すごい力ですね」と感心してくれる人物が宮殿にいるとは思えない。

 こっそりメグをうかがうと、彼女も首を横に振っている。

(そうですよね。みなさんには悪いですが秘密にしておきましょう)