事故は前王の王妃――現王太后が開催した園遊会で起こった。

 宮殿の庭を散策しながら貴族たちが交友を深める催しで、子どもの参加も歓迎されていた。
 しかし、社交で忙しい大人は子どもの面倒を見るまで手が回らない。

 そのため、子どもたちには王妃の侍女が世話人としてつくことになっていた。

 遊び場は会場のはし、大きな樫の木がある茂みのそばだ。
 いつもは家でお行儀よくしなさいと叱られている貴族令息は、ここぞとばかりに走り回った。

 歩きはじめたばかりのシュゼットも会場にいた。
 母はカルロッタに妹から目を離さないように言いつけたが、彼女は他の令嬢とおままごとをするのに夢中でろくに見ていなかった。

 ボンネットを付けたシュゼットが芝生の上を一人でよちよち歩く。
 その真上では、木に登った貴族令息たちがちゃんばらごっこに興じていた。

 攻めているのはアンドレだ。剣代わりの木の棒をブンと振った拍子に足をすべらせて、シュゼットの真上に落ちてきた。

「きゃああああああ!」