シュゼットは目をキラキラさせた。
 おさがり品で生きてきたので、この美しい品々が自分のために用意されたという事実に感動したのだ。

 支度部屋には、王妃専属の侍女がひっきりなしに出入りしている。

 鏡台の前に座ったシュゼットが新しいアクセサリーや靴を見せられるたびに甘い吐息をもらし、使い慣れたベールの下で瞳をうるませていたら、侍女の一人にくすくすと笑われた。

「そんなに驚いて。まるで小さな女の子みたいですよ、シュゼットお嬢様」

 白いリボンをカチューシャのように巻いて後頭部で結んでいるのは、引きあがった目元が印象的なメグだ。

 彼女は、ジュディチェルリ家からついてきてくれた唯一の使用人である。
 シュゼットより十も年上で、おさがり姫と揶揄して虐げてくる周囲には同調せずに味方でいてくれた。

 こざっぱりした性格はあけすけで気持ちがいい。
 内気で何事も諦めがちなシュゼットだが、メグにだけはなんでも話せた。

 シュゼットは、興奮した様子で両手を握ってメグに感動を伝えた。

「だって、本当に驚いているんです。まるでエリック・ダーエの恋愛小説に出てくるヒロインになった気分ですよ。作品名でいうなら――」

「「――『みなしご令嬢の華麗なる結婚』!」」