「ラウル様、大丈夫ですか?」
紅茶を机に置いたバルドが思わず声をかけてしまうくらい、ラウルの面相は悪かった。
目の下には真っ黒なクマができあがっている。
眉間の皺は普段の二倍だし、ペンを持つ手は力をこめすぎて白くなっている。
ラウルはいつも多忙だが、夜通し仕事に励むのが五日も続けば心配になる。
ちなみに、ここは宮殿ではなくルフェーブル公爵家のラウルの執務室だ。
バルドは公爵家の面々とも仲が良く、こうして滞在してはラウルの仕事を手伝っていた。
ラウルはどんなに仕事がたまっていても実家に戻ったら泥のように眠るのがお決まりだった。
それなのに、五日前に泣き腫らした目で帰ってきてから少しも休んでいない。
明らかに異常事態だった。
「まるで五十人もの旅人を襲った伝説の山賊みたいですよ? そろそろお休みになった方がいいのでは……」
「いい。少し黙っていてくれ」
ラウルは、寝不足で充血した目をシュゼットに渡された宮廷録に落としていた。
その姿は痛々しいほどに懸命で、自分で自分を虐めているようにも見えた。
体も頭も重いが仕方がないのだ。
ベッドに横になっても眠れないし、何かに没頭していないとどうしても彼女を思い出してしまう。
あの晩、毅然と別れを告げた王妃の姿が目に焼き付いて離れない。
(シュゼット……)
紅茶を机に置いたバルドが思わず声をかけてしまうくらい、ラウルの面相は悪かった。
目の下には真っ黒なクマができあがっている。
眉間の皺は普段の二倍だし、ペンを持つ手は力をこめすぎて白くなっている。
ラウルはいつも多忙だが、夜通し仕事に励むのが五日も続けば心配になる。
ちなみに、ここは宮殿ではなくルフェーブル公爵家のラウルの執務室だ。
バルドは公爵家の面々とも仲が良く、こうして滞在してはラウルの仕事を手伝っていた。
ラウルはどんなに仕事がたまっていても実家に戻ったら泥のように眠るのがお決まりだった。
それなのに、五日前に泣き腫らした目で帰ってきてから少しも休んでいない。
明らかに異常事態だった。
「まるで五十人もの旅人を襲った伝説の山賊みたいですよ? そろそろお休みになった方がいいのでは……」
「いい。少し黙っていてくれ」
ラウルは、寝不足で充血した目をシュゼットに渡された宮廷録に落としていた。
その姿は痛々しいほどに懸命で、自分で自分を虐めているようにも見えた。
体も頭も重いが仕方がないのだ。
ベッドに横になっても眠れないし、何かに没頭していないとどうしても彼女を思い出してしまう。
あの晩、毅然と別れを告げた王妃の姿が目に焼き付いて離れない。
(シュゼット……)



