ごそごそという物音に合わせて、ドレスのお尻についた五段のフリルが揺れる。

 飴色の家具をずらりと並べた支度室には絹ずれの音が響いているが、音を立てるドレスの主の顔は見えない。
 先ほどから大きなワードローブに頭を突っ込んでいるからだ。

 彼女がやってくるのはいつも突然だ。
 他のメイドたちは、南国の鳥みたいに派手な彼女が見えると、急に用事を思い出したと言って我先に部屋を出ていった。

 取り残されたシュゼットは、被った短めのベール越しにもう一時間も派手なお尻をながめている。

(いつになったら終わるのでしょう)

 心の声に答えるようにお尻が――いや、ドレスの主が話し出した。

「やってもやってもキリがないわ! 去年作ったこのドレスは衿のデザインがもう下火だし、こっちはレースの産地が気に入らなくて一度も着なかったのよね。ちょっとこのショール、虫食い穴が開いているじゃない。高かったのに!」

 彼女はシュゼットの姉カルロッタ。
 シュゼットには新品同然に見える服や小物の数々を、さほど吟味もせずに床へ放り投げていく。

 さすがはジュディチェルリ家の金食い虫。
 容赦がない。

 絨毯の掃除はさっき終わらせたばかりだけど、カルロッタの手つきが乱暴なせいで服が傷んでしまいそうだ。
 できることなら今すぐに拾い集めたい。

 そして丁寧に折り畳んで、姉の手の届かない清潔な場所にしまいたい。
 その方が、衣服たちも落ち着くだろうから。

(ですが、そうしたらお姉さまがお怒りになるでしょう……)