7月15日、あなたに告白します。

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「おはよう、日野さん」


 その一言に、私はハンドルを握る手に力をこめた。
 さて、ここからが私の正念場だ。


「おはよっ、天ヶ崎くんっ」


 私はできうる限り精いっぱいのかわいい笑顔を向けた。
 しかし天ヶ崎くんはとりたてて大きな反応もなく、いつものさわやかスマイルで一つうなずいただけだった。


(手ごわいっ!手ごわすぎるよっ、天ヶ崎くんっ!!)


 初手から先が思いやられるけれども、ここでくじけるわけにはいかない。
 私は今日一日で彼を惚れさせ、彼と付き合わなくてはならないのだから。

 とにもかくにも、一分一秒も無駄にするまいと私は話を始める。


「天ヶ崎くん、今日の数学の宿題やってきた?」

「うん、日野さんは?」

「やってきたよ!けど難しかった・・・天ヶ崎くんは数学得意だし、きっと余裕だったよね・・・」

「全然だよ。数学が得意っていうのも、他の教科と比べるとって話だし」

「えー?天ヶ崎くんこの間の難しい問題もすらすら解けてたし、そんなことないと思うけどな~」


 私のイメージするモテる女の子の会話をどうにか再現してみたのだが、天ヶ崎くんの表情はまったく赤面も動揺も見て取れなかった。
 まあそんな気はしてたけど・・・。

 とりあえず踏切が開く前に、告白の約束だけでも取り付けなくては。


「あ、そうだ、天ヶ崎くん」


 さも、今思いついたかのように私は口を開く。


「今日の放課後、ちょっと話があるんだけど・・・いいかな?」

「!」


 一週目と同じように、天ヶ崎くんは何かを察したのか、今日初めて少しだけ動揺を見せた。


「・・・うん、いいよ」

「ありがとう」


 私がお礼を言ったその瞬間、電車が近づいてくる音が聞こえてきた。


(あー・・・朝のアピールタイム終了だぁ・・・)


 だめだ、全くアピールできた気がしない。
 ノー勉で挑んだテストぐらい手ごたえがなかった。


「電車来るね」


 天ヶ崎くんの、名残惜しさなんか微塵も感じていないであろう一言。
 まあ天ヶ崎くんにとっては、私との会話より、踏切の先にいる友達との会話のほうが楽しいんだろうから仕方がない。

 私は最後にせめてと、勇気を振り絞った。


「あ・・・、天ヶ崎くんと・・・もうちょっと、しゃ、しゃべりたかったんだけどなぁ・・・」

「え」


 天ヶ瀬くんが、少しだけびっくりしたかのように私をまじまじと見つめてきた。

 え、これは何?ちょっとぐらっと来たってことでいいの・・・?


「な、何・・・?」

「いや・・・、日野さんはてっきりおしゃべり苦手だと思ってたから・・・」

「あー・・・」


 なるほどなるほど。
 つまりさっきの「え」は、私の発言にドキッとしたわけではなく、「こいつしゃべるの下手なのに話すの好きなんだー、意外ー」っていう驚きですか?

 ぐらっと来たのではなく、ぎょっとしたってわけか。
 私の期待を返して・・・。

 第一、私はおしゃべりは苦手じゃない。
 好きな人の前だとうまくしゃべれないだけで。


「・・・しゃべるのが苦手かはわかんないけど・・・、天ヶ崎くんとしゃべるのは、好きだよ」

「そっか、ありがとう。じゃあこれからもこの時間は話そう」


 これからもこの時間は話そう・・・。
 それって・・・結局今まで通りってことですよね・・・。


「じゃあまた教室で」


 天ヶ崎くんはさわやかに笑って、踏切があくと同時に渡って行ってしまった。

 私は天を仰いだ。
 神よ・・・見ているか、私の苦しみを・・・。