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「日野永です!北中出身で、部活は吹奏楽に入ろうと思ってます!よろしくお願いしますっ!」
教卓でその子が頭を下げると、教室に拍手が起こる。
「はいありがとう。じゃあ次の人―――」
ヒノハルカ、と俺は口の中でつぶやいた。
それは偶然か必然か――――俺の初恋の人と同じ名前だったから。
保育園のころ、近所のお祭りで会った同い年の女の子。
再会の約束を忘れてはいなかったけど、半ばあきらめてはいた。
でも恋愛に興味はなかったし、友達にその手の話題を振られたらその話をして逃げていた。
現実味のない、それでいてちょうどいい思い出話。
そのくらいの感覚だった。
(・・・でも、もしかしたら)
もし、もしもあの子が約束の子なら・・・。
俺は高校入学して早々、気になる人ができてしまった。
おそらく人生で初めて。
「あのっ!」
最初の会話を交わしたのは、たぶん合宿レクリエーションのとき。
「・・・なに?」
緊張のあまり固すぎる声が、俺の喉から出たのを覚えている。
日野はそれにビビったのか、少しだけ顔をひきつらせた。
(・・・あ、待って、えと、なんて、言えばいい・・・?)
自分が不愛想で、女子から怖がられがちなことを自覚してはいた。
これまではそれで困ったことなんてなかったけど・・・。
「―――――あ、」
「日野さん、どうかした?」
何か言いつのろうとした俺の声に被ったのは、清翔の声。
「あ、あのねっ、今日の夜の班長会議、開始時間が変わるらしくて、各班に連絡してまわってて・・・!」
清翔が話しだした途端、ほっとしたような表情で話し出す日野。
この手のこと、中学までもよくあったんだけど・・・。
「そっか、わかった。教えてくれてありがとう」
「うんっ!」
嬉しそうに顔をほころばせる日野を見て、俺は思わず顔をそむけた。
(・・・大丈夫、まだ引き返せる)
日野が約束の子かどうかなんて、確証はない。
約束の子かもしれないと思って意識しているだけで、好きになったわけじゃない。
なんとなくずっと、入学してから自分にそう言い聞かせていた。
「―――――え、なんで!?」
合宿レクリエーション二日目。
和やかな雰囲気の中、一つだけ動揺が走った班があった。
「お米炊けてないんだけど・・・!」
「は!?なんで・・・!?」
「担当した人だれ・・・!?普通に今から炊きなおしても間に合わねーし・・・!」
俺はたまたまその一場面を見ていて、その様子に思わず足を止めた。
そしてそれが日野の班だと気がついた。
「一応あたしもやったけど、でも一人でやったわけじゃないし・・・」
「なんでこんなことなんの、ちゃんと手順通りやればさ―――――」
「よし!!」
若干口論になりかけていたのをぶった切るように、日野が声を上げた。
「こうなった以上はしかたないから!私、他の班まわって余ったお米ないか確認してみるよ!」
そう言って、日野はなんてことないといった感じで満面の笑みを浮かべる。
「田原くんと葵ちゃんは、作業がまだ残ってるみたいだから続きをしてて!他の子は同じクラスの班を手分けしてまわってほしい!私、他クラスの班をまわってみるね!」
そう自信満々に話す日野の声は・・・少しだけ震えていて。
思わぬハプニングに、動揺しないわけがない。
入学したての、しかも他クラスの班をまわるなんて、緊張しないわけがない。
でもそれをおくびにも出さず・・・。
「・・・あの!」
俺は気づけば日野に話しかけていた。
びっくりしたような顔の日野に、俺は何といったものかと困りながら言葉を継ぐ。
「・・・俺の班、米あまってたはず、だから・・・とってくる。あの、同じクラスの3班で・・・」
「!」
びっくりした表情の日野の顔が、少しづつ緩んで。
「・・・あっ、ありがとう・・・!佐倉くん!!」
「・・・っ」
安堵したようにほころんだ。
その顔が・・・はるか昔に見た、約束の女の子の姿と重なった。
涙を流していたのに、俺を見て安堵したようにほころんだあの瞬間に。
「・・・・い、ってくる・・・!」
俺は動揺を悟られないよう、慌てて踵を返した。
その瞬間、確信した。
日野があの約束の女の子なんだと。
そして・・・自分の気持ちはもう、引き返せそうにもないのだと。
「日野永です!北中出身で、部活は吹奏楽に入ろうと思ってます!よろしくお願いしますっ!」
教卓でその子が頭を下げると、教室に拍手が起こる。
「はいありがとう。じゃあ次の人―――」
ヒノハルカ、と俺は口の中でつぶやいた。
それは偶然か必然か――――俺の初恋の人と同じ名前だったから。
保育園のころ、近所のお祭りで会った同い年の女の子。
再会の約束を忘れてはいなかったけど、半ばあきらめてはいた。
でも恋愛に興味はなかったし、友達にその手の話題を振られたらその話をして逃げていた。
現実味のない、それでいてちょうどいい思い出話。
そのくらいの感覚だった。
(・・・でも、もしかしたら)
もし、もしもあの子が約束の子なら・・・。
俺は高校入学して早々、気になる人ができてしまった。
おそらく人生で初めて。
「あのっ!」
最初の会話を交わしたのは、たぶん合宿レクリエーションのとき。
「・・・なに?」
緊張のあまり固すぎる声が、俺の喉から出たのを覚えている。
日野はそれにビビったのか、少しだけ顔をひきつらせた。
(・・・あ、待って、えと、なんて、言えばいい・・・?)
自分が不愛想で、女子から怖がられがちなことを自覚してはいた。
これまではそれで困ったことなんてなかったけど・・・。
「―――――あ、」
「日野さん、どうかした?」
何か言いつのろうとした俺の声に被ったのは、清翔の声。
「あ、あのねっ、今日の夜の班長会議、開始時間が変わるらしくて、各班に連絡してまわってて・・・!」
清翔が話しだした途端、ほっとしたような表情で話し出す日野。
この手のこと、中学までもよくあったんだけど・・・。
「そっか、わかった。教えてくれてありがとう」
「うんっ!」
嬉しそうに顔をほころばせる日野を見て、俺は思わず顔をそむけた。
(・・・大丈夫、まだ引き返せる)
日野が約束の子かどうかなんて、確証はない。
約束の子かもしれないと思って意識しているだけで、好きになったわけじゃない。
なんとなくずっと、入学してから自分にそう言い聞かせていた。
「―――――え、なんで!?」
合宿レクリエーション二日目。
和やかな雰囲気の中、一つだけ動揺が走った班があった。
「お米炊けてないんだけど・・・!」
「は!?なんで・・・!?」
「担当した人だれ・・・!?普通に今から炊きなおしても間に合わねーし・・・!」
俺はたまたまその一場面を見ていて、その様子に思わず足を止めた。
そしてそれが日野の班だと気がついた。
「一応あたしもやったけど、でも一人でやったわけじゃないし・・・」
「なんでこんなことなんの、ちゃんと手順通りやればさ―――――」
「よし!!」
若干口論になりかけていたのをぶった切るように、日野が声を上げた。
「こうなった以上はしかたないから!私、他の班まわって余ったお米ないか確認してみるよ!」
そう言って、日野はなんてことないといった感じで満面の笑みを浮かべる。
「田原くんと葵ちゃんは、作業がまだ残ってるみたいだから続きをしてて!他の子は同じクラスの班を手分けしてまわってほしい!私、他クラスの班をまわってみるね!」
そう自信満々に話す日野の声は・・・少しだけ震えていて。
思わぬハプニングに、動揺しないわけがない。
入学したての、しかも他クラスの班をまわるなんて、緊張しないわけがない。
でもそれをおくびにも出さず・・・。
「・・・あの!」
俺は気づけば日野に話しかけていた。
びっくりしたような顔の日野に、俺は何といったものかと困りながら言葉を継ぐ。
「・・・俺の班、米あまってたはず、だから・・・とってくる。あの、同じクラスの3班で・・・」
「!」
びっくりした表情の日野の顔が、少しづつ緩んで。
「・・・あっ、ありがとう・・・!佐倉くん!!」
「・・・っ」
安堵したようにほころんだ。
その顔が・・・はるか昔に見た、約束の女の子の姿と重なった。
涙を流していたのに、俺を見て安堵したようにほころんだあの瞬間に。
「・・・・い、ってくる・・・!」
俺は動揺を悟られないよう、慌てて踵を返した。
その瞬間、確信した。
日野があの約束の女の子なんだと。
そして・・・自分の気持ちはもう、引き返せそうにもないのだと。


