7月15日、あなたに告白します。

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 体育の授業が終わって、昼休みになった。


「・・・永、どうしたの?さっきからソワソワして」


 いっしょにお弁当を食べている深友が、私を不思議そうに見つめる。

 体育が終わった後、佐倉くんはまだ教室に戻ってない。

 天ヶ崎くんは委員会に行ってしまった。
 さっきの話は忘れてほしいと言い添えて。


「さっきの時間なんかあった?保健室から帰ってきて、ずっと上の空だけど」

「・・・なんでもないよ」


 そう言って深友に微笑みかけようとしたその時。


「!」


 まさに教室に戻ってきた佐倉くんと目が合う。
 目が合った瞬間、佐倉くんは動揺したように固まった。


「・・・ごめん深友!ちょっと用事!」

「え?」


 きょとんとする深友を置いて立ち上がった私。
 そんな私を見た瞬間、佐倉くんは踵を返す。


「あっ・・・!」


 私は教室の机にあちこちぶつけながら入り口まで行く。
 廊下を歩く佐倉くんは私を振り返ることなく、すたすたと遠ざかっていく。


「待って、佐倉くん!」

「・・・・」


 私の声がまるで届いていないかのように佐倉くんは歩を早める。
 私は半ば走っているぐらいのペースで彼を追いかける。


「佐倉くん・・・!」

「・・・・」

「佐倉く・・・わっ!?」


 ひたすらに佐倉くんに追いつくことだけに執心して歩いていたら、段差につまづく。
 よろめいて、軽く手をつく。


「・・・大丈夫」


 ぶっきらぼうな声が頭上から降ってくる。
 視線を上げると―――ー。


「・・・うん、ありがとう。佐倉くん」


 こんなときまで、お人好しなんだ。
 さっきまで私を避けていたくせに、放っておかないんだ。

 そういうところ・・・ズルい。


「・・・佐倉くん、さっきの、あの・・・聞いてたよね?」

「・・・・」


 佐倉くんは私の言葉に、バツの悪そうな表情をする。
 何も言わなくても、その沈黙が肯定を示していた。


(・・・ああ、嫌だな)


 前まで天ヶ崎くんのことが好きだったのは、まぎれもない事実。
 でも・・・。

 私の好きな人が天ヶ崎くんだって、そんな風に佐倉くんに思われるのが、なんだかとても嫌だった。



「・・・あのね、まずその・・・天ヶ崎くんの言葉は、深い意図はないと思う」


 現に私は彼に何度も振られているもの。


「天ヶ崎くんからは、忘れてって言われたし・・・」

「・・・・」

「それにね、それに・・・」


 私は。
 私の好きな人は・・・。


(伝えたい)


 私の好きな人は、天ヶ崎くんじゃなくて・・・。


「・・・・っ」


 伝えたい、のに。
 唇が震える、手が震える、声が震える。

 喉の真ん中に、小さくて暗い塊が詰まったみたい。

 私は浅くなった呼吸のまま、それでも精いっぱい息を吸って。



「――――わたし!私・・・、の、好きな人は―――――!」

「聞いたよ」


 佐倉くんの、唐突な一言。
 私は虚を突かれて言葉をとめる。


「・・・さっきの、保健室の、聞いてた」

「・・・・」

「・・・二人は、」


 佐倉くんが視線を下げる。
 うつむきがちなその表情は・・・なんだか泣いているように見えて。


「二人は、よく似合ってると思う」

「・・・ちがうの・・・私、」

「言いふらしたりとか、そういうの心配してるのかわからないけど、そんな気は全くないし・・・俺のことは気にしなくていい。俺は二人のこと応援する」

「佐倉くん、あの――――――」

「俺、先生に呼ばれてるんだ。ごめん、もう行くよ」


 そう言って佐倉くんは足早に駆け去って行く。

 追いかけたくて、追いかけたくてたまらなかった。
 でも・・・追いかけられなかった。

 去って行く背中が、なんだかすごく遠く感じて。