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体育の授業が終わって、昼休みになった。
「・・・永、どうしたの?さっきからソワソワして」
いっしょにお弁当を食べている深友が、私を不思議そうに見つめる。
体育が終わった後、佐倉くんはまだ教室に戻ってない。
天ヶ崎くんは委員会に行ってしまった。
さっきの話は忘れてほしいと言い添えて。
「さっきの時間なんかあった?保健室から帰ってきて、ずっと上の空だけど」
「・・・なんでもないよ」
そう言って深友に微笑みかけようとしたその時。
「!」
まさに教室に戻ってきた佐倉くんと目が合う。
目が合った瞬間、佐倉くんは動揺したように固まった。
「・・・ごめん深友!ちょっと用事!」
「え?」
きょとんとする深友を置いて立ち上がった私。
そんな私を見た瞬間、佐倉くんは踵を返す。
「あっ・・・!」
私は教室の机にあちこちぶつけながら入り口まで行く。
廊下を歩く佐倉くんは私を振り返ることなく、すたすたと遠ざかっていく。
「待って、佐倉くん!」
「・・・・」
私の声がまるで届いていないかのように佐倉くんは歩を早める。
私は半ば走っているぐらいのペースで彼を追いかける。
「佐倉くん・・・!」
「・・・・」
「佐倉く・・・わっ!?」
ひたすらに佐倉くんに追いつくことだけに執心して歩いていたら、段差につまづく。
よろめいて、軽く手をつく。
「・・・大丈夫」
ぶっきらぼうな声が頭上から降ってくる。
視線を上げると―――ー。
「・・・うん、ありがとう。佐倉くん」
こんなときまで、お人好しなんだ。
さっきまで私を避けていたくせに、放っておかないんだ。
そういうところ・・・ズルい。
「・・・佐倉くん、さっきの、あの・・・聞いてたよね?」
「・・・・」
佐倉くんは私の言葉に、バツの悪そうな表情をする。
何も言わなくても、その沈黙が肯定を示していた。
(・・・ああ、嫌だな)
前まで天ヶ崎くんのことが好きだったのは、まぎれもない事実。
でも・・・。
私の好きな人が天ヶ崎くんだって、そんな風に佐倉くんに思われるのが、なんだかとても嫌だった。
「・・・あのね、まずその・・・天ヶ崎くんの言葉は、深い意図はないと思う」
現に私は彼に何度も振られているもの。
「天ヶ崎くんからは、忘れてって言われたし・・・」
「・・・・」
「それにね、それに・・・」
私は。
私の好きな人は・・・。
(伝えたい)
私の好きな人は、天ヶ崎くんじゃなくて・・・。
「・・・・っ」
伝えたい、のに。
唇が震える、手が震える、声が震える。
喉の真ん中に、小さくて暗い塊が詰まったみたい。
私は浅くなった呼吸のまま、それでも精いっぱい息を吸って。
「――――わたし!私・・・、の、好きな人は―――――!」
「聞いたよ」
佐倉くんの、唐突な一言。
私は虚を突かれて言葉をとめる。
「・・・さっきの、保健室の、聞いてた」
「・・・・」
「・・・二人は、」
佐倉くんが視線を下げる。
うつむきがちなその表情は・・・なんだか泣いているように見えて。
「二人は、よく似合ってると思う」
「・・・ちがうの・・・私、」
「言いふらしたりとか、そういうの心配してるのかわからないけど、そんな気は全くないし・・・俺のことは気にしなくていい。俺は二人のこと応援する」
「佐倉くん、あの――――――」
「俺、先生に呼ばれてるんだ。ごめん、もう行くよ」
そう言って佐倉くんは足早に駆け去って行く。
追いかけたくて、追いかけたくてたまらなかった。
でも・・・追いかけられなかった。
去って行く背中が、なんだかすごく遠く感じて。
体育の授業が終わって、昼休みになった。
「・・・永、どうしたの?さっきからソワソワして」
いっしょにお弁当を食べている深友が、私を不思議そうに見つめる。
体育が終わった後、佐倉くんはまだ教室に戻ってない。
天ヶ崎くんは委員会に行ってしまった。
さっきの話は忘れてほしいと言い添えて。
「さっきの時間なんかあった?保健室から帰ってきて、ずっと上の空だけど」
「・・・なんでもないよ」
そう言って深友に微笑みかけようとしたその時。
「!」
まさに教室に戻ってきた佐倉くんと目が合う。
目が合った瞬間、佐倉くんは動揺したように固まった。
「・・・ごめん深友!ちょっと用事!」
「え?」
きょとんとする深友を置いて立ち上がった私。
そんな私を見た瞬間、佐倉くんは踵を返す。
「あっ・・・!」
私は教室の机にあちこちぶつけながら入り口まで行く。
廊下を歩く佐倉くんは私を振り返ることなく、すたすたと遠ざかっていく。
「待って、佐倉くん!」
「・・・・」
私の声がまるで届いていないかのように佐倉くんは歩を早める。
私は半ば走っているぐらいのペースで彼を追いかける。
「佐倉くん・・・!」
「・・・・」
「佐倉く・・・わっ!?」
ひたすらに佐倉くんに追いつくことだけに執心して歩いていたら、段差につまづく。
よろめいて、軽く手をつく。
「・・・大丈夫」
ぶっきらぼうな声が頭上から降ってくる。
視線を上げると―――ー。
「・・・うん、ありがとう。佐倉くん」
こんなときまで、お人好しなんだ。
さっきまで私を避けていたくせに、放っておかないんだ。
そういうところ・・・ズルい。
「・・・佐倉くん、さっきの、あの・・・聞いてたよね?」
「・・・・」
佐倉くんは私の言葉に、バツの悪そうな表情をする。
何も言わなくても、その沈黙が肯定を示していた。
(・・・ああ、嫌だな)
前まで天ヶ崎くんのことが好きだったのは、まぎれもない事実。
でも・・・。
私の好きな人が天ヶ崎くんだって、そんな風に佐倉くんに思われるのが、なんだかとても嫌だった。
「・・・あのね、まずその・・・天ヶ崎くんの言葉は、深い意図はないと思う」
現に私は彼に何度も振られているもの。
「天ヶ崎くんからは、忘れてって言われたし・・・」
「・・・・」
「それにね、それに・・・」
私は。
私の好きな人は・・・。
(伝えたい)
私の好きな人は、天ヶ崎くんじゃなくて・・・。
「・・・・っ」
伝えたい、のに。
唇が震える、手が震える、声が震える。
喉の真ん中に、小さくて暗い塊が詰まったみたい。
私は浅くなった呼吸のまま、それでも精いっぱい息を吸って。
「――――わたし!私・・・、の、好きな人は―――――!」
「聞いたよ」
佐倉くんの、唐突な一言。
私は虚を突かれて言葉をとめる。
「・・・さっきの、保健室の、聞いてた」
「・・・・」
「・・・二人は、」
佐倉くんが視線を下げる。
うつむきがちなその表情は・・・なんだか泣いているように見えて。
「二人は、よく似合ってると思う」
「・・・ちがうの・・・私、」
「言いふらしたりとか、そういうの心配してるのかわからないけど、そんな気は全くないし・・・俺のことは気にしなくていい。俺は二人のこと応援する」
「佐倉くん、あの――――――」
「俺、先生に呼ばれてるんだ。ごめん、もう行くよ」
そう言って佐倉くんは足早に駆け去って行く。
追いかけたくて、追いかけたくてたまらなかった。
でも・・・追いかけられなかった。
去って行く背中が、なんだかすごく遠く感じて。


