7月15日、あなたに告白します。

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「永!男子のコート見て!」

「んー?」


 体育の時間。
 深友の言葉で男子コートを振り返る。


「・・・次、天ヶ崎くん出るみたいだよ・・・!」


 弾けた声で私に耳打ちしてくる深友。
 そしてそんな深友の耳打ちをかき消すような黄色い歓声が女子コートであがる。


「きゃー!天ヶ崎くん次出るって!」

「え、やだ私も見たいのに試合でないといけないんだけど!お願い代わってー!!」

「絶対むりっ!」


 私もその声たちにつられて男子コートに目を向けると、天ヶ崎くんがさっきまで試合をしていた子たちからビブスを受け取っている様子が目に入る。


「第1試合でも天ヶ崎くん大活躍だったもんねー!」

「そうだね」


 私に弾んだ声で話す深友とは対照的に、私の視線は天ヶ崎くんを外れて。

 天ヶ崎くんの隣でビブスを着ける佐倉くんへと吸い込まれる。


(・・・佐倉くんも、次出るんだ・・・)


 佐倉くんがサッカーする姿って、あんまり想像できない。
 どんな感じなんだろう、なんて少しワクワクしていたら、ホイッスルが鳴り響く。


ピ――――ッ!


 お願いしまーす、と男子コートで挨拶の声があがり、さっそく試合開始。


「きゃー!天ヶ崎くんかっこいいー!!」

「え!え!今いまの動き!!かっこよすぎるんだけど!」

「一瞬でゴール決めたんだけど!やばいカッコいい!!」


 女子たちが天ヶ崎くんの一挙手一投足に歓喜する。
 少し前の、というか7月14日までの私なら、きっと嫌ってくらいそれに共感していたと思う。

 でも今の私は。


「うわ!やっぱり天ヶ崎くんすごいね・・・!大活躍じゃん!」

「・・・・」


 でも今の私は、コートの隅で少し気だるそうにボールを追いかける佐倉くんが、気になって仕方がない。


 緩い感じでコートを駆けて。
 時折見せる天ヶ崎くんのプレーに、敵チームなのに拍手を送ってたりして。

 時折回ってくるパスにちょっとだけ気だるそうな顔をして。
 そのくせなんだかんだいい動きしてみせて。

 ゴール決めるとこはサッカー部のメンバーに譲ったりして。


 そのどれもが、あまりにも佐倉くんって感じ。


「・・・ふふ」

「永?どうかした?」

「・・・なんでもない」


 今はまだ、私だけが知っている。

 佐倉くんがコートの片隅で気だるげにプレーしていることも、そのくせお人好しで誰かのためならがんばれちゃうところも。
 今はまだ、私だけの秘密で。


 周囲が天ヶ崎くんのプレーで沸き立つ中。
 そんな彼に向けて満面の笑みで拍手を送る佐倉くんから、私は目が離せなかった。


「あ、女子コートの試合終わったみたい。私次あるから行ってくるねー!」

「うん」


 深友の言葉に、私は気もそぞろにうなずく。
 試合を終えた女子はそそくさと男子コートを見に来て、次試合の女子は悲痛な叫びを残してコートへ向かう。


(・・・佐倉くん、まだちょっとサボってる)


 ゴール前が混戦していたら毎回そう。
 そんな佐倉くんに目を奪われていたその時。


「――――危ないっ!」


 声のするほうに顔を向けた瞬間には、もうボールが目の前に飛んできていた。
 そして避ける間もなく右頬に超強い衝撃が走る。


「うぐぅ・・・っ!!」


 油断しまくっていた私はもろに顔面でボールを受け、腰を抜かす。


「い、いたい・・・」

「ご、ごめん日野さん!」


 そう言って駆け寄ってきたのは天ヶ崎くんだった。
 さすがの天ヶ崎くんも若干慌てた様子で、私の前にひざまずく。


「大丈夫!?ごめん力入りすぎた・・・!立てる?」

「だ、だいじょうぶ!ちょっと私がぼーっとしてたせいだから!」


 心配をかけまいと立ち上がろうとしたら、ぐっと天ヶ崎くんに腕を引っ張られた。
 途端に天ヶ崎くんとの距離が近づく。

 周囲の女子が息を呑む音が聞こえた気がする。


「・・・えっ!?だ、大丈夫だよ!?一人で立てるよ・・・!?」

「・・・でも」


 心配そうな表情の天ヶ崎くんは一瞬辺りを見渡すと、ちょっと待ってて、と私に言い残す。

 そしてビブスを近くの男子に渡し、先生に何事か伝えると私のもとへ戻ってくる。


「ごめん、お待たせ。念のため保健室行こうか」

「え?・・・いっしょに?試合は?」

「代わってもらった」


 こともなげに言い放つ天ヶ崎くんに、私は驚愕を隠せない。

 こんな全女子が見守る天ヶ崎くんを私のせいで欠場にするわけには・・・!


「いやいやいや!一人で行けるよ!?」

「でも、心配だから」


 なおも粘ろうとする私に構わず、天ヶ崎くんは軽く私の背中を押して歩き出す。


「肩かそうか・・・?」

「いや!本当に!あの!うん、わかった!付き添ってくれるだけで十分だからっ!!」


 なぜこんなことに・・・。
 以前までの私なら大歓喜の展開。

 天ヶ崎くんへの気持ちが吹っ切れた直後にこんなことになるとは。

 運命の悪戯ともいうべき展開に動揺しながら、私はおずおずと保健室に向かうのだった。