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「・・・日野?」
佐倉くんに話しかけられた瞬間、驚いてリップクリームを取り落としそうになった。
「あっ・・・!さっ、佐倉くん・・・!!お、おはよ・・・!!」
「ああ、おはよう」
佐倉くんは目を丸くしたまま私を見つめる。
「日野、こんな時間に珍しいな。普段は自転車通だろ」
「えっ、あ・・・えと、えーっと」
佐倉くんの質問に私は慌てる。
さすがに「佐倉くんと登校するためにバスにしたんだ」と本人の前で言う度胸はない。
というかこれまで通り、佐倉くんにとって今の私は単なるクラスメイト。
その程度の関係性の人からそんなこと言われたらさすがに引いちゃうでしょう。
「・・・あ!えっと、自転車パンクしてて!それで、今日の朝急遽バスに変更したんだー!」
「そうか、それは大変だったな」
私の言葉を素直に信じる佐倉くん。
「じ、自転車で行こうと思ってたからさ、朝時間あまっちゃって……でさ、時間あったから……ヘアアレンジしてみた、んだけど・・・」
ああダメだ。
昨日まで普通に話せたはずなのに、自然に話そうと思うほどうまく話せない。
「すごい、それ自分でやったのか?器用だな」
佐倉くんは心底感心したようにそう言ってくれた。
嬉しいけど違う・・・。
ちょっと拗ねながら佐倉くんを見上げると、私を見ていた佐倉くんとばっちり目があった。
「・・・あっ、ごめ・・・」
目があった瞬間、佐倉くんがぱっと目をそらした。
「・・・かわいい?」
「えっ、あ、うん」
目をそらしたまま佐倉くんが焦った声で答える。
それを聞いて、つい私は笑みをこぼした。
「『うん』じゃなくてさ・・・かわいい?」
「・・・ああ」
「同じようなものじゃん。そうじゃなくて、」
なんだかだんだん楽しくなってきて、意気揚々と佐倉くんをイジろうとしたら、佐倉くんに遮られた。
「かわいい」
「!」
「・・・これでいいか。勘弁してくれ、こういうのは不慣れなんだ・・・」
やけに早口にそう言う佐倉くんの耳は、少しだけ赤くなっていて。
私は自分の口の端が緩むのを感じた。
「・・・あ、佐倉くん、寝癖ついてる」
「え」
佐倉くんが慌てた様子で軽く寝癖を押さえつける。
すぐに寝癖の位置がわかったのは、おそらく朝すでに寝癖と格闘してきたからだろう。
それがわかるのは、何周か早朝の彼の奇抜な寝癖を見てきたからだ。
「・・・直ったか?」
「ううん」
「・・・もうだめだな、これは」
佐倉くんが呆れたように手を離した。
また緩やかに跳ね上がる寝癖を見て、私はまた笑みがこぼれる。
昨日までなんでもなかった佐倉くんの一つ一つが目に留まる。
そのたびに、心がじんわり嬉しくなる。
時間通りやってきたバス。
「・・・座って」
空いた一つの座席を譲ってくれるのも、今まで通り。
かわいいって言い慣れてないところも。
寝癖に戸惑う姿も。
照れ隠しのぶっきらぼうな言い方も。
かわいいと思ってしまうこの気持ちは、きっと愛おしさなんだ、と。
バスに揺られる佐倉くんの横顔をみていて気がついた。
「・・・日野?」
佐倉くんに話しかけられた瞬間、驚いてリップクリームを取り落としそうになった。
「あっ・・・!さっ、佐倉くん・・・!!お、おはよ・・・!!」
「ああ、おはよう」
佐倉くんは目を丸くしたまま私を見つめる。
「日野、こんな時間に珍しいな。普段は自転車通だろ」
「えっ、あ・・・えと、えーっと」
佐倉くんの質問に私は慌てる。
さすがに「佐倉くんと登校するためにバスにしたんだ」と本人の前で言う度胸はない。
というかこれまで通り、佐倉くんにとって今の私は単なるクラスメイト。
その程度の関係性の人からそんなこと言われたらさすがに引いちゃうでしょう。
「・・・あ!えっと、自転車パンクしてて!それで、今日の朝急遽バスに変更したんだー!」
「そうか、それは大変だったな」
私の言葉を素直に信じる佐倉くん。
「じ、自転車で行こうと思ってたからさ、朝時間あまっちゃって……でさ、時間あったから……ヘアアレンジしてみた、んだけど・・・」
ああダメだ。
昨日まで普通に話せたはずなのに、自然に話そうと思うほどうまく話せない。
「すごい、それ自分でやったのか?器用だな」
佐倉くんは心底感心したようにそう言ってくれた。
嬉しいけど違う・・・。
ちょっと拗ねながら佐倉くんを見上げると、私を見ていた佐倉くんとばっちり目があった。
「・・・あっ、ごめ・・・」
目があった瞬間、佐倉くんがぱっと目をそらした。
「・・・かわいい?」
「えっ、あ、うん」
目をそらしたまま佐倉くんが焦った声で答える。
それを聞いて、つい私は笑みをこぼした。
「『うん』じゃなくてさ・・・かわいい?」
「・・・ああ」
「同じようなものじゃん。そうじゃなくて、」
なんだかだんだん楽しくなってきて、意気揚々と佐倉くんをイジろうとしたら、佐倉くんに遮られた。
「かわいい」
「!」
「・・・これでいいか。勘弁してくれ、こういうのは不慣れなんだ・・・」
やけに早口にそう言う佐倉くんの耳は、少しだけ赤くなっていて。
私は自分の口の端が緩むのを感じた。
「・・・あ、佐倉くん、寝癖ついてる」
「え」
佐倉くんが慌てた様子で軽く寝癖を押さえつける。
すぐに寝癖の位置がわかったのは、おそらく朝すでに寝癖と格闘してきたからだろう。
それがわかるのは、何周か早朝の彼の奇抜な寝癖を見てきたからだ。
「・・・直ったか?」
「ううん」
「・・・もうだめだな、これは」
佐倉くんが呆れたように手を離した。
また緩やかに跳ね上がる寝癖を見て、私はまた笑みがこぼれる。
昨日までなんでもなかった佐倉くんの一つ一つが目に留まる。
そのたびに、心がじんわり嬉しくなる。
時間通りやってきたバス。
「・・・座って」
空いた一つの座席を譲ってくれるのも、今まで通り。
かわいいって言い慣れてないところも。
寝癖に戸惑う姿も。
照れ隠しのぶっきらぼうな言い方も。
かわいいと思ってしまうこの気持ちは、きっと愛おしさなんだ、と。
バスに揺られる佐倉くんの横顔をみていて気がついた。


