7月15日、あなたに告白します。

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 アイスを食べ終えて、しばらくお母さんと他愛もない話をして、自室に戻った。


「・・・もう日が暮れたか・・・」


 普段ならとっくに告白が終わって、そろそろ家につこうかというところだ。
 そんなことを考えていると、スマホが震えた。


『永、今日休んでたけど大丈夫だった?』


 深友からのメッセージだった。


『大丈夫。暑くなってきたから軽く熱中症になっただけ。もう元気』


 筋肉ムキムキなスタンプをついでに送っておいた。
 深友は嬉しそうなスタンプと、授業のノートの写真を送ってくれた。

 別に授業はもう復習に復習を重ねているからノートを送ってもらわなくても大丈夫だったのだが、その深友の気遣いが私の気持ちを温かくした。


「他の子にも心配かけちゃったなー」


 深友以外にも、夕方くらいから何件か心配してメッセージを送ってくれた友達がいた。
 心配をかけてしまって申し訳なかったけど、同時にすごく嬉しかった。


「・・・佐倉くん、心配したかな」


 ふと、そんな考えが頭をよぎった。

 連絡先を交換してないので、佐倉くんからはなんの連絡もない。
 交換していたとしてもメッセージをくれるかどうかはわからないけど。

 私はつい気になって、クラスのグループから佐倉くんの連絡先を開いた。


「・・・急に追加なんかしたら迷惑かなぁ・・・」


 そう思うと連絡先を開いたのに、ただ何もできずその画面とにらめっこ。


「・・・アイコンの猫って、飼ってるやつかなぁ・・・」


 灰色の、どことなくふてぶてしさを感じさせる猫。
 無愛想なとこ、ちょっと佐倉くんに似ている。

 そう思うと、ついくすっと笑みがこぼれた。

 そしてその拍子に、佐倉くんの連絡先を追加してしまった。


「あーーっ!!!」


 やばい。
 追加しちゃった。

 これ多分バレる・・・よね?

 かといってどうやって取り消せばいいのかもわからない・・・。

 慌てすぎてまた手が触れた。今度は通話ボタン。


「うわーーーっ!!!とと、ちょ、待!!!」

『—————もしもし?』

「うぇ!?」


 焦りすぎて変な声が出た。
 すると電話ごしに、ふっと笑う声が聞こえた。


『日野・・・だよな?どうした?急に』

「う、え、あー・・・えっと、クラスのグループ見てたら・・・手が、滑って・・・」

『そうか、意外とドジなんだな』


 どう考えたってクラスのグループを見ていて手が滑って個人通話をかけてきてくるだなんて何度やらかせばそうなるのか疑問を抱きそうなものなのに、佐倉くんはあっさり受け入れた。


『今日休んでただろ。大丈夫だったか?』

「あ、うん。あの、軽い熱中症」

『そうか。これから暑くなるから気をつけろよ。じゃあ——————』

「あっ」


 通話が切られる流れになり、私は思わず焦った声をあげた。


『・・・せっかく通話始めたんだし、もう少し話すか?』

「えっ?」

『え?』


 まさか佐倉くんのほうから通話を続けようと誘ってくれるとは思わず、微妙な反応を返してしまった。
 そのせいか、佐倉くんが今度は焦って続けた。


『いやっ・・・!さっき切ろうとしたらなんか言いかけてたから!てっきり話したいことがあるのかと思って言っただけなんだ!別にそういうわけじゃないならいい!時間取らせてごめん!』

「あっ、そ!そういう!!」

『そういう?』

「そういうことですっ!あの、話したいです!」

『・・・・っ!』


 佐倉くんが一瞬言葉に詰まって、また話し出す。


『・・・じゃあ・・・話すか』

「うん・・・話す」


 話す、とは言ったものの、何を話すか。
 佐倉くんからすれば現状私は知人レベルで、話題に困るだろうから・・・この場合私からなにか話題を提示しなければ。


「あ、ね、ねぇっ!佐倉くん!」


 緊張して少しだけ声が裏返ってしまった。
 普段は普通に話せるのに、自分の家で夜電話越しに話してる状況って、なんだかものすごく緊張する。


「佐倉くんってさ、好きな人いるんだよね?でさ————」

『ちょ待っ!!え!?どこでそれ知った!?』

「あ」


 そうだ。佐倉くんから聞いたもんだから、つい佐倉くんに好きな人がいるってことを前提に話し出してしまったけど・・・昨日までの会話もなかったことになっているんだった。
 っていうか何回このミスをすれば気が済むんだろう、私。


「か、カマかけたんだーっ!へへーっ!ひっかかったなーっ!」

『・・・なんだよ・・・そういう・・・、焦らせるなって・・・』


 佐倉くんはほっと息をついた。


「まあでもその反応はやっぱいるんだね」

『・・・いるよ』

「やっぱり!」


 やっと本題に入れそうだ。
 これまでの周で知ったことを言わないよう慎重に考えつつ、口を開く。


「・・・私さ、今ね、好きな人のとこ、本当に好きなのかわからなくなってきて・・・」

『・・・うん』

「佐倉くんにとって、好きって・・・どういう気持ち?」


 しばらく、考え込んでいるのか何も返事がなかった。 
 私も何も言わず、ただ佐倉くんの答えを待っていた。

 やがて、ノイズ混じりの声が聞こえる。


『ありきたり、だけど・・・ついその人のことを考えたり、その人のこと目で追ったり・・・とか』

「考えたり・・・目で追ったり・・・」

『あとは・・・そうだな、連絡先追加するかどうかで三ヶ月くらい悩んだり・・・あと下の名前呼ぶの心の中で想像したり・・・いやごめんこれはキモイな』

「えぇ?キモくないよー全然」


 むしろそんなに一途に想ってもらえるって、きっと嬉しいだろう。

 佐倉くんに想ってもらえる人はきっと幸せだ。
 そう思うと同時に、少しだけ、いや本当はかなりうらやましく思ってしまった。


『そんな感じ・・・だけど。日野は?』

「私?」

『清—————あっ、好きな人に対して、そういう風にならないのか?』


 今絶対清翔って言おうとした。
 確かに佐倉くんには最初からバレてたな、なぜか。


「天ヶ崎くんに対してはね、なんか・・・ならないの」

『・・・言いのか?名前出して』

「いいの。どうせバレてるじゃん」

『・・・・』


 っていうか普通に否定したい。
 今私は天ヶ崎くんのこと好きなのかどうかわからない状態なんだけど・・・それでもなんだか、佐倉くんに天ヶ崎くんのことが好きって思われてる状態が、なんだか嫌だった。


『まあならないからって絶対違うとは言えないからな。これはあくまで俺の場合はって話だし』

「・・・うん、まあそうなのかもしれないけどさ」


 私はぼんやり天井を見つめつつ、思いついたまま口を開く。


「・・・じゃあさ、ちょっと違うんだけどさ、起きてすぐその人に会いたいって思ったり、その人の側にいるとなんだか不思議に安心したりするのって、好きってことなのかな」

『・・・それは確定だろ』


 呆れたような佐倉くんの声。


『不安になるまでもないだろ。日野はちゃんと清翔のこと好きってことだ』

「・・・確定、かぁ・・・」


 佐倉くんに、天ヶ崎くんのことを好きって思われるのが嫌なんて言ったけど、今回は否定しなかった。
 否定したら、じゃあ誰に対して会いたいって思って、誰といて安心するんだって聞かれたら、逃れようがないから。


「・・・わかった、ありがとう、佐倉くん」

『なんだ、解決か?』

「うん」


 その後、今日の授業中の話を少しだけ聞いて、お互いおやすみを言い合って電話を切った。


(確定か・・・)


 確定で好き、なんだ。

 私は佐倉くんのことが、確定で好きらしい。どうやら。