7月15日、あなたに告白します。

==========



 約束通り、佐倉くんは次の授業の合間も、その次の授業の合間も、毎回保健室に顔を出しに来た。
 そしてあろうことか昼休憩まで保健室にやってきた。

 目を離した隙に私が死んでいるかも、なんて思っているんだろうか。


「日野、弁当持ってきたぞ」

「・・・佐倉くんさ、ほんと暇なんだね」


 わざと嫌味ったらしくそう言ってみたけど、佐倉くんは気にも留めないで保健室の椅子に腰かけた。
 そして自分も弁当を広げる。


「・・・佐倉くん、天ヶ崎くんと食べないでいいわけ?」

「清翔は今日委員会の集まりがあるからな」


 そういえばそうだった。
 私も一旦ベッドから降り、近くのパイプ椅子に腰かけて弁当を広げる。

 十四回目のお弁当。
 以前まで大好物だった冷凍食品のから揚げも、昨日の残りのポテトサラダも、正直一口も食べる気が起きない。
 さすがに食べすぎて拒否反応を起こしそうだが、ぐっとこらえてどうにか食べ進める。


「・・・なぁ、今日ずっと思ってたこと、聞いてもいいか?」

「・・・なに?」

「俺ら、昨日までただのクラスメイトだっただろ。なのになんで今日は急に俺を頼ってきたんだ?」


 私はどう答えたものか、と悩みつつ、から揚げをほおばる。


「・・・逆に聞くけど、なんでただのクラスメイトが助けて求めてきて、わざわざそれを引き受けたわけ?」

「それは・・・まあ・・・」

「答えられない理由?それとも特に理由なんかない?」

「・・・答えられない」

「なら私も答えない」


 それだけ言って私は会話を止め、また食べ進める。


「・・・じゃあさ、朝の質問の意味は?」

「・・・朝の質問?」

「『もしも今日から先の人生がなくなるってなったらどうする?』ってやつ。あの時はなんとも思わなかったんだけど・・・なんか、言い回しが変わってるなって」


 そう言いつつも具体的にどこが変なのか明確に説明はできないようで、佐倉くんが困ったように頭をかく。


「・・・今日死ぬんだとしたら普通、『今日死ぬなら最後に何をする?』とかさ、そういう感じになるだろ、普通。『今日から先の人生がなくなる』って・・・なんか違和感ある言い回しだなってずっと思ってたんだ」

「・・・言葉の綾じゃん」

「まあそうなんだろうけど・・・あの時の日野、たとえ話をするような軽い調子じゃなかったから・・・あの質問のこと、どうしても気になって」

「・・・だからあれは冗談。そんで言葉の綾。細かい男はモテないからね、佐倉くん」


 私のセリフで佐倉くんが押し黙った。

 佐倉くんっていちいち鋭いことを言ってくる。
 私のループがバレたときも、こんな感じの追求をされたっけ。

 佐倉くんが押し黙り、私たちの間に沈黙がよぎる。


「・・・・」

「・・・・」


 黙々と食べ進めているうちに、10分ほど経過し、そろそろ佐倉くんが食べ終わりそうというところで保健室の扉が開いた。


「応助、やっぱりここにいた」

「清翔?」


 なぜか天ヶ崎くんの姿がそこにはあった。


「委員会だったんじゃなかったのか?」

「予定より早めに終わったから戻ってきたんだ。応助と合流しようと思ったんだけど教室にいなかったから、もしかして保健室かもなって」

「よくわかったな」

「よくわかったも何も・・・今日ずっと、暇さえあれば保健室来てるんだしわかるって」


 天ヶ崎くんはあきれ顔でそう言って、私に向きなおる。


「日野さん、体調は大丈夫?」

「・・・うん、大丈夫」

「そっか。僕もここで食べてもいい?」

「・・・いいよ」


 天ヶ崎くんは新しくパイプ椅子を出し、そこに座って弁当を食べ始める。


「にしても・・・応助と日野さん、結構仲いいんだね」

「・・・たぶんそうでもないと思うぞ。まともに話したの今日が初めてだからな」


 佐倉くんは私のほうをうかがいつつ、そう答えた。


「それにしてはずいぶん仲がいいような気がするけどね。そんなに応助ばっかり日野さんと話してると妬けちゃうなぁ」

「・・・・え!?」


 佐倉くんが驚愕の声をあげた。
 私も声こそあげなかったけど、かなり驚いて箸を落とすところだった。


「あはは、冗談」

「じょうだん・・・?」


 佐倉くんがいぶかしむように天ヶ崎くんを見つめた。

 確かに天ヶ崎くんってそんなに冗談を言うタイプではない気がするから、私も少し違和感。
 かといってさっきの発言が本心で言ったものだとすると、そのほうが違和感あるんだけれど。


「・・・天ヶ崎くん」

「ん?」


 けれども私は、ちょうどよいタイミングだと、その機会に乗らせてもらうことにした。


「・・・放課後、空けておいて。話がある」

「!」


 天ヶ崎くんは少し驚いた顔をして、ちらりと佐倉くんを一瞥して、最後に何も言わずうなずいた。
 佐倉くんも、何も言わなかった。