7月15日、あなたに告白します。

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ピンポーン

 チャイムを押すとすぐ、いつも通り、佐倉くんのお姉さんと思しき制服姿の女性が顔を出した。


「えっと・・・どちら様ですか・・・?」

「・・・佐倉くんは・・・?」

「え?いや・・・えっと?」


 これまでも佐倉くんのお姉さんは、早朝から訪ねてきた私に少し戸惑った様子を見せていたけど、今日は一段と困惑していた。
 そりゃ泣きはらした目の虚ろな顔の女の子が早朝に訪ねてくれば、困惑もするだろうけれども。


「・・・と、とりあえず応助呼んできますね・・・?」


 佐倉くんと同じ学校の制服を着ていたため、不審がりつつも佐倉くんを呼びに行ってくれた。

 いつもなら佐倉くんがドタドタと階段を駆け降りてくる音がするのだけれど、今日は静かに、気だるげな様子で扉が開いた。


「はい、どちら様で————っえ!?日野!?」


 そして私を見て驚愕する佐倉くん。


「な、なんっ————」


 焦っていたが、ふと私の表情を見て固まる。
 そして心配そうに私の顔をのぞきこんできた。


「だ、大丈夫か・・・?何かあったのか・・・?」

「・・・・」


 私の目に、心配そうな表情の佐倉くんが映り込む。


(・・・さくらくんだ・・・)


 昨日と何一つ変わらない佐倉くんが、そこにいた。
 そしてまた、私の目から涙があふれた。


「えっ!!あ、え、ど、どうした!?」

「・・・・っ、・・ぅ、・・っ」

「な、なんで泣いてるんだ!?え、お、俺は・・・ど、どうすれば・・・」


 おろおろする佐倉くん。
 昨日の佐倉くんならきっと、手を握ってくれたはずだ。

 昨日と何一つ変わらない佐倉くん。
 だけどたった一つ、思い出だけが残っていない佐倉くん。

 昨日いっしょに過ごした時間も、交わした言葉も、何も覚えていない。

 昨日私とともに夜を過ごした佐倉くんも、言葉を交わした佐倉くんもそこにはない。
 そして今日どれだけいっしょに時間を過ごそうが、言葉を交わそうが、その佐倉くんも次の日にはいなくなってしまうわけで。


「・・・・っなんでも、ない・・・」

「え?」


 私はごしごしと、自分の目元を乱雑にぬぐった。


「なんでもないっ・・・って言ったのっ!学校行くからさよならっ」


 それだけ叫んで、私は踵を返す。
 そして駆け出そうとした。
 しかし。


「ちょ、待っ―――――!」


 佐倉くんが私を呼び止める声が聞こえたけれど、私は振り返らず駆けだした。
 これ以上、佐倉くんといっしょにいると余計明日が怖くなってしまいそうだったから。