7月15日、あなたに告白します。

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 夕日が沈みかけてきたころ、私と佐倉くんは教室を出た。

 佐倉くんが送ってくれるとのことだったので、バスで帰った。
 どうせ学校に置き去りにした自転車も明日にはリセットされる。


「そういえばさ、聞いてくれよ。今日すごい不運でさ」

「・・・・」

「朝学校来たら通行止め。俺いつもぎりぎりのバスに乗るからそのせいで遅刻したんだよな・・・」

「・・・・」

「しかも坂田先生に捕まるし・・・知ってるか?坂田先生って朝8時40分に見回りに行くんだ」

「・・・・」

「あ、まあ日野は俺と違って余裕もって登校してくるからいらない情報か・・・」

「・・・・」

「けど今日に限ってなんか坂田先生が早く見回りしててさ」

「・・・・」


 佐倉くんは何も言わない私に、怒るでもなく、会話をやめるでもなく。
 ただずっと、他愛ない話を振ってきていた。

 時折、なにも答えない私を、心配そうに見つめて。
 そしてまた、何事もなく話を続ける。

 佐倉くんは普段そこまで話すほうじゃないから、一生懸命、話題を探して話してくれていた。

 そうやって、バス停から私の家の前までやってきた。


「・・・でさ、そのときの田原が俺のこと置いて先行きやがって」

「・・・・」

「あとから問い詰めたら――――――あ、ここ家?」


 私が立ち止まったの見て、佐倉くんが気づいた。


「・・・意外と近いんだな、俺らの家」

「・・・・」

「中学違ったけど、お互い校区の端っこ同士だったってことか」

「・・・・」

「・・・って、ごめん、これ以上長居させちゃだめだったよな」


 佐倉くんは私の手を、不器用に握った。


「・・・ごめんな、元気づけてあげたかったけど・・・俺、そういうのへたくそで・・・ほんとごめん」

「・・・・」

「・・・じゃあ俺、帰るよ・・・」


 佐倉くんの手が、名残惜しそうに離れた。
 佐倉くんが私に背を向けて歩き出そうとする。

 その瞬間、私の喉がようやく震えた。


「―――――まって」


 小さな、小さな呼びかけだったけど、佐倉くんは振り返った。
 目と目が合う。


「・・・かえりたくない・・・」

「・・・!」


 帰りたくない。
 帰りたくない・・・・。

 帰ってしまえば、また明日が来てしまう。
 帰ってしまえば、また全部なかったことになってしまう。
 帰ってしまえば、また全部一から。

 そんなの・・・もう嫌だ。


「・・・かえっ・・・かえりたくっ・・・な・・・っ」


 泣きながら、必死に私は言った。

 帰りたくない、明日になってほしくない。
 ずっとずっと、このままがいい。

 佐倉くんが、時計を見た。
 もう辺りは薄暗くなり始めていた。


「・・・なんか、食べに行く?」

「・・・・っ、・・・・」

「ちょっと待ってて、たぶん今お金――――」


 佐倉くんが慌てて財布を確認し始める。


「――――安いとこならおごれる。ファミレスとか」


 私の瞳を、のぞきこむ。


「・・・行く?」


 私はすぐにでも大声で、行く、って言いたかったけど、うまく言葉が出なくて。
 ただ何度も何度も、うなずいて見せた。