7月15日、あなたに告白します。

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 放課後。
 空き教室で、時計を見上げた。


(16時15分だから・・・あと6分―――――)


 天ヶ崎くんが来るまでの残り時間を確認した瞬間、がらっと扉があいた。


「えっ!?」

「遅くなってごめん、ちょっと先生に呼び止められて」


 いつもは16時21分に慌てて駆け込んでくるはずの天ヶ崎くんが、6分早く入ってきた。
 歩いてきたからかいつもとは違い息が上がっている様子もない。

 戸惑いつつ、告白しようかと思った矢先、天ヶ崎くんが先に話し始める。


「先にちょっと、報告してもいいかな?」

「え・・・あ、うん」

「ついさっき顧問の先生と話してきて。副部長、引き受けるって伝えてきたよ」

「!」


 副部長を引き受けることを決めたから、顧問の先生との話が早く終わったってことか。
 これって・・・本当の本当に、可能性があるかも。

 なんだか、すべてがうまく行ってる気がする。


「日野さんのおかげで決断できたから・・・どうしても報告しておきたくて」


 これって!これって・・・!これって・・・!!

 私は破裂しそうなほどの期待で膨らむ胸を落ち着かせ、口を開いた。


「・・・天ヶ崎くん、今日私が天ヶ崎くんを呼んだのはね、私からも、どうしても言っておきたいことがあって」

「うん」

「私・・・!天ヶ崎くんのことが好きです!!」


 今の私ができる精いっぱいの気持ちをのせて、気持ちを伝えた。

 私の気持ち、精いっぱいの気持ち、どうか、どうか、どうか受け取って。
 どうか、どうか―――――。

 何度も何度も何度も心の中で祈った。
 天ヶ崎くんは、私の瞳を、まっすぐに見つめ返した。黙ったまま。

 そして。


「・・・・っごめん!」


 勢いよく、天ヶ崎くんが頭を下げた。


「・・・・え・・・?」


 気づけば声が出ていた。
 私の視界が、なんだか色あせていく。


「日野さんのおかげで決断できて、お礼も言った。だから本当は気持ちに応えたいって思う。・・・けど今は誰とも付き合う気がなくて・・・そんなあいまいな気持ちで日野さんと付き合うの、逆に失礼だと思うんだ・・・」

「・・・いま・・・だれとも・・・つ・・・き・・・・」


 放心状態の私は、呆然とただ言葉を繰り返す。


「都合いいこと言って、本当にごめん・・・」


 天ヶ崎くんの、真剣な声。
 でもその言葉すら・・・耳に入ってこない。

 天ヶ崎くんは、しばらくの間何も言わず頭を下げ続けていた。
 そして頭を上げた後、私の顔をうかがう。


「・・・ごめんね・・・」


 天ヶ崎くんは私の顔を見て、もう一度かすれるような声で謝った。

 きっと私が、見ていられないほどひどい顔をしていたんだろう。
 感情が抜け落ちたかのような、人形のような顔を。

 あまりにも動かない私に、天ヶ崎くんが困ったように視線を逸らす。


「・・・あの、僕・・・」

「・・・いいから」


 かろうじて、私はそうつぶやいた。


「・・・またあした・・・」


 うまく、言えていただろうか。
 自分ではわからなかった。

 天ヶ崎くんは小さくうなずくと、もう一度頭を下げて、教室を出て行った。

 夕日でオレンジ色に染まったはずの教室が、色あせて見えた。