7月15日、あなたに告白します。

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 授業は確かに永遠のようにも思えたし、いざ放課後になってみるとあっという間だったようにも思えた。

 授業自体は普段通り。
 ちょっと変わったことと言えば、普段はクラスごとの体育が今日は全クラス合同だったこととか。
 社会のとき数人グループで発表させられたこととか。

 そのくらいだ。

 そうこうしている内に一日は終わり、いよいよ放課後がやってきた。


(・・・だめだ緊張しすぎて死ねる・・・っ!!)


 私は空き教室で一人、天ヶ崎くんを今か今かと待ちわびていた。
 緊張で、喉が渇くわ手が震えるわ、居ても立っても居られない気分だった。


(やっぱ無理かもやっぱ無理かもやっぱ無理か――――――)


 逃げ出したい気持ちに駆られた瞬間、教室の扉ががらりと開かれた。


「遅くなってごめんっ、ちょっと先生に呼び止められて・・・っ」


 走ってきてくれたのか、天ヶ瀬くんは少し息を切らしていた。


「だ、だだだ大丈夫っ」


 唇が震えてまともにしゃべれない・・・。
 こんな状態で告白できるのだろうか、私は・・・。


「それで・・・話っていうのは?」


 さっそく本題を突き付けてくる天ヶ崎くん。
 こう言われてはもう言い逃れのしようもない。


(言うしかない、言うしかない・・・っ!覚悟決めろぉぉぉっ!私っ!!)


 私は、さっきより酸素濃度が薄くなった(ような気がする)空気を肺いっぱいに吸い込んだ。


「私っ!」

「うん」

「あ、あま、天ヶ崎くんのことがっ!!」


 告白する前は、ちゃんと目を見て、とか、こういう前置きをして、とか、いろいろ考えていたはずなのに、もう今となってはそれを思い出す余裕もなかった。


「す、好きですっ!あのっ、友達としてとかじゃなくて!お、男の子としてっ!あ、いや今の時代この言い方じゃだめか・・・っ!じゃなくて恋愛対象としてっ!!」


 わかりやすさとコンプライアンスに気をつかって、わけのわからない告白をしてしまった。

 天ヶ崎くんはというと、あまり驚いた様子もなく私の告白を聞いていた。
 たぶん朝のお誘いの段階で、薄々感づいていたのかもしれない。

 天ヶ崎くんは少しだけ考え込むような素振りを見せ、口を開いた。


「・・・えっと、答えたくなければいいんだけど・・・、どうして僕を?」


 よくぞ聞いてくれました。
 本当は最初に告白する時点で言いたかったんだけれど、緊張でセリフが飛んで伝えられなった部分。


「それは、あの・・・、ず、ずっと、好きだったから・・・です。桜の約束からずっと、天ヶ崎くんのこと、好きだったから・・・」

「・・・桜の約束?」


 天ヶ崎くんの怪訝そうな一言で、私は察した。
 天ヶ崎くんが、私と交わした桜の約束を覚えていないことに。


「・・・えっと・・・や、やっぱりなんでもない・・・・」

「・・・そっか・・・」


 私たちの間に、気まずい沈黙が流れた。
 告白にあるまじき、重い沈黙・・・。


「・・・えっと、気持ちはうれしいんだけど・・・」


 沈黙を破ったのは、天ヶ崎くんのその一言だった。

 続く言葉が明らかな枕詞を聞いて、私は膝から崩れ落ちそうになった。


「・・・ごめん。今は誰とも付き合う気がなくて・・・」

「・・・・そ、そっか・・・」


 断り方まで優しいんだぁ・・・、と、心の中で涙の叫びを発する。

 誰とも付き合う気がない、なんて言われちゃえば、もうどうしようもない。


「・・・じ、時間とらせてごめん。あの、あ、明日からは登校時間ずらすから・・・」

「あ・・・うん、ありがとう・・・、じゃああの・・・お先に・・・」


 天ヶ崎くんは申し訳なさげな表情で私に別れの挨拶を言い、静かに退室していった。

 取り残される私。

 教室にはとたんに、静寂がひろがる。


「・・・・・まじかぁ・・・」


 告白する前は、振られたら絶対泣くって思っていたけれど、案外涙は出なかった。
 現実を受け止め切れていないのか、はたまたショックすぎて涙も出ないのか。

 私は上の空なまま家に帰り、上の空なままご飯を食べ、上の空なままお風呂に入り、上の空なままベッドに入り、いつの間にやら眠りに落ちていた。