7月15日、あなたに告白します。

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「じゃあ総当たり戦形式でやっていくぞー、最初はこっちのコートでAチームとBチーム―――――」


 体育の先生の指示を聞きながら、私は男子の列にちらっと視線を向けた。

 私の斜め後ろあたりにいた佐倉くんと、目が合う。
 そして佐倉くんは小さくうなずきを返してくる。


ピ―――――――ッ!!


 先生の指示が終わり、試合開始のホイッスルが鳴る。

 最初は私も佐倉くんも試合がなかったので、観戦席の後ろのほうで落ち合った。


「じゃあ話の続きだけど」


 佐倉くんはすぐに本題に入った。
 時間は限られているからありがたいことだ。


「さっき、十回目の7月15日って話してただろ」


 佐倉くんは周りに人がいるからか、若干ひそひそと話し出す。


「告白も十回目?」

「ううん、二回やってない周があって・・・で、今回の周はまだやってないから・・・七回告白したね」

「・・・ってことはそれ全部・・・」


 振られました。
 と、自分でいうのはなんだか虚しかったので、静かにうなずいておいた。


「・・・手ごわいな、清翔」

「うん、っていうよりかはまず恋愛する気がないんだと思う。毎回『誰とも付き合う気はない』って言って断られ―――――――あ」


 私が急に話を止めたので、佐倉くんも不思議そうに私を見やる。

 私の頭の中で、前回―――――九周目の告白の返事がよみがえる。
 前回、攻略のきっかけになるかもしれないことを聞いたんだった。 


「・・・そういえば前回振られたときにね、天ヶ崎くんが『最近整理つかないことがあって、それがあるうちは、付き合うとかそういうのはいい』みたいなこと言ってた・・・」

「・・・整理つかないこと・・・」

「だからね、もしかしたらその『整理つかないこと』が解決したら、案外恋愛にも乗り気になってくれるかも、って思ったんだけど・・・」


 私のセリフを聞いて、考え込む佐倉くん。
 天ヶ崎くんから何かそれらしいことを聞いているのかと、私は期待を込めたまなざしで佐倉くんが話し出すのを待った。


「・・・もしかしたら、って思うことはあるんだけど」

「!」

「でもちょっと確証がないな・・・。ちょっと体育の後、清翔にそれとなく確認してみる」


 別に確証がなくても構わないんだけれども。
 今まではノーヒントでがむしゃらにやってきたわけだし、それに比べれば幾分かましってものだ。

 けれどせっかく本人に確認してくれるってことだから、お言葉に甘えておこう。
 天ヶ崎くんと親しい佐倉くんが味方になってくれたからこそ、使える手なわけだし。


「ありがとう、佐倉くん」

「ああ」


 まだ一試合目終了までは時間がありそうだ。


「あともう一つ聞いておきたいことがあって」


 佐倉くんがまた話を切り出してきた。


「明日になれば全部リセットされるってことは・・・たぶん俺も、日野のループの話をきれいさっぱり忘れるってことだよな?」

「うん、そうなるだろうね」

「もし日野が俺の協力が必要だと思うなら、明日以降の俺にも相談してくれ」


 確かに佐倉くんは強力な味方だけど・・・。
 でも、今日は朝からいろいろと接点が多かったけど、そうでもなければほぼ話したこともないようなくらいの仲だ。

 その程度の仲の相手に急に相談されたところで、果たして協力してくれるかどうか・・・。

 考え込む私に、佐倉くんはさらに言葉を続ける。


「たぶん日野が相談すれば確実に協力すると思う。明日になろうと明後日になろうと、俺だしな」

「なるほど・・・?」


 そこまで断言できる理由はよくわからないけど、自分でもお人好しって自覚してる、ってことだろうか。
 とにかく、日雇いバイトのお手伝いさんを手に入れたと考えよう。

 そう考えていると、試合終了のホイッスルが鳴った。
 それを聞き、佐倉くんは立ち上がる。


「明日以降の俺にスムーズに相談できるようにいくつか案を考えておく」

「うん、ありがとう」

「じゃあ俺、次試合だから」


 佐倉くんがそう言い残して立ち去ろうとした瞬間、ちょうど声がかかる。


応助(おうすけ)、ここにいたんだ」


 佐倉くんに声をかけてきたのはまさに―――――話の中心人物、天ヶ崎くんだった。

 天ヶ崎くんはふと、佐倉くんの隣に座っていた私に目を留める。


「・・・日野さん?日野さんとしゃべってたの?」

「ああ。たまたま近くにいただけだけどな」

「へぇ・・・あんまり二人がしゃべってるの見たことない気がするから意外」


 天ヶ崎くんが何かを言いたげに私と佐倉くんを交互に見た。
 けど結局言葉を飲み込んだのか、佐倉くんにだけ声をかけた。


「応助、次試合でしょ。がんばってね」

「おう」


 佐倉くんが小さく手を振って、コートに入っていった。
 てっきり私は、その後天ヶ崎くんは別の友達のところに向かうのかと思ったのだけれど。


「日野さん、隣いい?」

「へっ!?」

「あ、嫌だった?」

「いっ!嫌とかじゃ―――――」


 あ、ここで思い至ったけど、今日のキャラ何も決めてなかった。
 そう思って固まる私。

 なんだか素の私になると途端に緊張してしゃべれなくなるんだ。

 天ヶ崎くんは私の隣に腰を下ろした。


「応助としゃべってるの、珍しいよね。何話してたの?」

「・・・あ、えっとー・・・」


 天ヶ崎くんにループのこと、話してみてもいいのかどうか。
 私は迷ったけど、結局言えず嘘をついてしまった。


「・・・今日の朝、たまたま助けてくれたから。そのお礼言ってたんだ」

「朝?あ、そういえば踏切で会わなかったよね。休みなのかと思ったら応助といっしょに遅刻してくるし。なんかあったのかなーって気になってたんだ」


 私は今朝あったことを話してあげた。
 土手でこけたことと、その後のハプニング、そして佐倉くんが通りがかりに助けてくれたこと。


「あはは、応助らしいなぁ」


 天ヶ崎くんはそういってどことなく嬉しそうに笑うと、コートにいる佐倉くんに視線を向けた。


「あいつ、困ってる人をつい助けちゃう性分っていうか。一見不愛想だけど実はそういうとこあるからさ、きっとそれで日野さんのことも放っておけなかったんだろうね」

「そうなんだ」


 天ヶ崎くんとはその後、私の次の試合が始めるまで他愛もないことを雑談した。
 これまで、私から話しかけてばっかりで、天ヶ崎くんのほうから私の隣に座っていいか、なんて聞いてきたのは本当にびっくりした。

 それもこれも、私が佐倉くんと話していたからなわけで。
 やっぱり佐倉くんは強力な助っ人になりそうだ。


 結局その後、体育の時間中は佐倉くんと二人きりになれそうなタイミングがなく、ループの話は進められなかった。