7月15日、あなたに告白します。

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 私はどうにかバスに乗り込み、運転手さんに事情を説明して佐倉くんを待ってもらい、一分遅れでバス停を出発した。

 けどこの時間のバスで登校するってことは、一分の遅れも命取りだ。


(・・・っていうか、ループしてるってことは今日も・・・)


 前回起きたハプニングは、今回も同様に起きるってことじゃないか。
 けど交通規制も、坂田先生の予定外行動も、知ってさえいれば避けられることだ。

 今日は佐倉くんに助けてもらったことだし、お礼に遅刻回避をプレゼントしようではないか。

 バス停について、意気込んで佐倉くんを振り返る。


「よし!行こうっ、佐倉くんっ!」

「え」

「え?」

「・・・いっしょに、行くのか?」


 ・・・このやりとり前もしたな。
 二度も三度も繰り返すのは馬鹿らしいので、いいから行こう、と強引に出発した。

 っていうかよく考えると私は五周目で佐倉くんと関わった記憶があるけど、佐倉くんはその記憶はないわけで。

 つまり佐倉くんにとって私はただの顔見知りくらいの感じなのに、わざわざ助けに来てくれたってことになる。

 いやぁ、お人好しっていうかなんていうか。
 悪い大人に騙されないか心配になるレベルでいい人だ。


「・・・おい、そっちは遠回りだぞ」

「こっち今交通規制されてるんだってー、友達がラインで教えてくれた」

「へぇ・・・」


 佐倉くんは私の言うことを素直に信じ、遠回りなほうに着いてきてくれた。
 やっぱり悪い大人に騙されないか心配だ。


「・・・8時25分か・・・」


 走りながら時計を確認し、佐倉くんがそうつぶやく。


「えっとー・・・、あと15分か・・・っ」


 私は疲れて思わずそう返してしまった。
 そして言ってからはっとする。

 恐る恐る隣の佐倉くんを見ると、驚いたような顔をしていた。


「・・・日野、8時40分に見回りが来るって知ってたの?」


 そうだ、普通ならここは8時30分までで考えて、あと5分って言うところだ。
 どう考えてもあと5分じゃ無理だから、8時40分までって思ってついついあと15分って言ってしまったけれど・・・。

 よく考えると五周目で佐倉くんに会わなかったら知りえなかった情報だった、これ。


「・・・ぶ、部活の先輩から聞いた・・・っ!」

「へぇ、そうなんだ。俺以外に見回りの時間把握してる人いたんだ」


 佐倉くんは心底びっくりって感じでつぶやいた。

 まあそりゃそんな先輩架空の人物ですから。
 たぶんそこまで坂田先生の行動パターン把握してるのはこの学校で佐倉くんだけだと思うよ、いっそ誇っていいよ、と言いたいくらいだった。


(・・・いや待って。このままじゃだめじゃん)


 前回も8時40分までなら大丈夫!と安心して教室に向かったところ、なぜか坂田先生に捕まった。
 つまりそれを回避するには8時40分を目指して登校してもだめなのだ。


(えーっと・・・前回坂田先生に会ったのって8時何分だっけ・・・?)


 記憶の断片を手繰り寄せる。
 あのとき、ちょうど二組の前を通ったときに捕まった。
 そんで二組の時計をちらっと見た気がする。


(・・・確か・・・8時36分くらいを指してた気がする。で、坂田先生は職員室方面の階段から降りてきてたからー・・・)


 逆の階段からいけばいいのか。
 でも8時36分に教室に着いても二組の教室の前からうちの教室までは丸見えだし、結局捕まるか・・・。

 じゃあ8時35分?いや念のため8時34分?・・・わからん。


(あ、逆に職員室側の階段で待ち伏せしておいて、8時36分に坂田先生が一年生の廊下を通り過ぎたことを確認してからうちの教室に向かえばいいのでは?)


 これが一番現実的かも。

 問題はこれをどう佐倉くんに伝えるか、だ。


「・・・なんか、慣れてるな」

「へ?」

「・・・だって普通下足場行くかと思った」

「あ」


 そうだ、一時間目は靴下で受けるっていうのも佐倉くんの受け売りだった・・・。
 それを忘れてさも当然のごとく直接教室棟に向かってしまった・・・。


「・・・じ、時間やばいかなって思ってさ・・・とっさの判断?」

「・・・なるほど・・・?」


 さすがの佐倉くんも、一瞬微妙そうな顔をした。

 都合が悪いので佐倉くんのその微妙そうな視線は無視して、教室棟に忍び込む。


(・・・今8時34分・・・ちょうどいい感じ・・・)


 静かに静かに進んでいき、職員室方面の階段の辺りで止まる。
 そして階段の下に身を潜める。


「・・・どうした?」

「しー・・」


 人差し指を唇に当ててみせると、佐倉くんは戸惑いつつも黙った。

 私は人差し指でそのまま階段上を指し示す。
 そして小声で補足した。


「今、なんか坂田先生の声聞こえた気がする・・・」

「・・・まじ?」


 私は静かにうなずきを返し、佐倉くんを階段下に引き込んだ。

 するとベストタイミング。
 坂田先生がちょうど階段から降りてきた。

 隣で、佐倉くんが息をのんだ音が聞こえた。

 階段下からこっそり坂田先生の様子を盗み見る。
 あの時は気づかなかったけど、バインダーみたいなのを手に携えている。
 たぶん見回りだったらバインダーいらないよね?

 そう思っていると、坂田先生は一年二組の教室に消えていった。


「・・・二組入ってったね・・・?」

「・・・だな」


 ともかく、まずは今のうちに教室に入ろう。
 私たちは静かに一年生の教室を通り過ぎ、自分たちの教室に向かった。

 途中、一年二組の教室の前を通ると。


「はい席つけー。今日は急遽玉井先生がお休みになったんで自習だー、プリント配るぞー」


 どうやら一年二組が急に自習になったらしく、坂田先生はその自習監督としてやってきたらしかった。


(そういうことかー・・・通りで見回りの時間でもないのに出歩いてたんだ・・・)


 数日越しに理由が判明した。
 それに一時間目には遅れたけど、一時間目の先生は優しいと有名なおじいちゃん先生だったので、バスが遅延しましたって言ったら許してもらえた。

 まあ遅延したのも出発が遅れたせい・・・ひいては私のせいなんだけれども。