7月15日、あなたに告白します。

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ジリリリリリリリ――――――!!


「・・・・行きたくないよぉぉぉ・・・・」


 アラームを止め、私は布団に突っ伏した。

 今日で、十回目の7月15日だ。
 もうさすがにいい加減気が狂いそうだ。

 休みなし、成果もなし、毎日カレー、授業も同じ、会話の内容も意識して私から話題を振らない限りほぼ同じ。
 こんなことを一体あと何回繰り返せばいいんだ?

 もう嫌だ。
 もう逃げたい。

 でも逃げ場がない。

 どこに行っても朝は平等にやってくるから。

 どこに行っても7月15日はやってくるから。


 私はのそのそと布団から這い出した。
 そして食べ飽きてきた朝ご飯を飲み物で流し込み、余計なことを考えないよう心を無にしてどうにか家を出た。


「・・・今日は何系女子で行こーかなー・・・」


 踏切までの間に今日の作戦を立てるのも、もう日課になりつつある。

 これまでの感じだとサバサバした性格の子が好みっぽいから・・・なんて考えていると、突然がくんと体が揺れた。


「えっ!?」


 そしてそのまま、私は自転車ごとひっくり返る。
 ガッシャ――――ン!!という盛大な音とともに、私の体に大きな衝撃が走る。


「いっ・・・たぁ・・・」


 私は痛む体をどうにか起こし、辺りを見渡す。

 どうやらハンドル操作を誤り、土手から転がり落ちたようだ。
 幸い緩やかで段差も小さな土手だったこと、さらに下が柔らかい草だったこともあって大きなけがはないけど・・・。


「・・・地味に痛ぃ・・・」


 右足と右腕、どっちもうっすらと、だけど広範囲にすりむいていた。
 まあ大きな傷がなかっただけよかったけど・・・私これから告白を控えている乙女なんですけど?

 まあ言ってても仕方ない。
 すでに心折れそうだけどそんなこと言ってられない。
 早くしないと踏切に間に合わない。


「とりあえずこの土手のぼるか・・・」


 傾斜はそんなにきつくないし、自転車でのぼれそうだ。
 無理なら押してのぼればいい。

 私は数歩先に横たわった自転車に手を伸ばした。
 そして起こそうとする。


「・・・・んっ?んー、んー?」


 しかしなかなか自転車が起き上がらない。


「はぁ?なんでぇ・・・もう・・・」


 ただでさえ疲れているので若干イライラしつつよく見ると、川辺の沼っぽい土に右のハンドルが突き刺さっていた。


「・・・まじかー・・・」


 もう何もしたくないほどの無気力感に襲われたけど、今ならまだぎりぎり踏切に間に合うはず。

 しかたなく、カバンを下ろして袖をまくり、全力で自転車を引っ張った。


「ふんっ!!」


 ちょっと勇ましい声が出てしまった。
 けれど無事自転車を起き上がらせることに成功。
 まあ自転車の右側が泥だらけだけど。


「もー・・・しかもちょっと制服に飛んだしぃ・・・」


 泥が私の制服にちょっとかかっていた。


「・・・・わー・・・あはは・・・こんな感じの美術の授業で見たなーなんだっけー・・・そうだスッパッタリングだぁ・・・芸術的ぃ・・・」


 涙目の半笑いでそうつぶやき、私は現実から目を背けることにした。

 まあこの際自転車が起きたんだし良しとしよう。
 最悪明日になれば、制服の泥はねもすり傷もなかったことになるんだし。

 若干やけくそ気味にそう考え、カバンを背負った。
 そして自転車に乗り、こぎだす。


「・・・ん?」


 こぎだす。


「・・・んーっと・・・」


 こいでもこいでも進まないんだけど。
 なんで?

 自転車をまじまじと見るけど、私は何が問題なのかさっぱりわからない。


「・・・はぁ・・・まじか・・・」


 このままじゃ涙が出る。
 すべてがうまく行かないんだけど・・・なんで?


「・・・・今・・・7時52分か・・・」


 確実にもう踏切は開いただろう・・・。

 私はすべてを一旦投げ出すことにした。
 自転車を泥にはまらない位置で適当に放り、草の上で寝ころんだ。


「・・・もう・・・がんばりたくないぃ・・・」


 何もする気が起きないとは、まさにこのこと。
 私はぼんやりと雲を見上げ、考えることを放棄した。