7月15日、あなたに告白します。

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「はぁ・・・長かったね・・・」

「・・・だな・・・」


 お説教タイムがおわり、職員室から出てくると、さすがの佐倉くんも若干疲れている様子だった。


「佐倉くん、もう帰る?」

「ああ」

「じゃあせっかくだしバス停までいっしょ行こうよ」

「!」


 佐倉くんが驚いて私のほうを見た。


「・・・・いいのか?いっしょに帰って」

「え?いやそりゃだめなんて言わないよ・・・?」


 朝のことといい、佐倉くんは私からの誘いにいちいち驚いているように思う。
 それとももしかして佐倉くんはあんまり私と行動を共にしたくないんだろか、とふと勘繰ってしまうくらいだ。


「じゃあ・・・帰るか」


 けれど佐倉くんはこうやって、結局は誘いに乗ってくれるのでたぶん嫌われてはないと思うけど・・・。
 私は気を取り直して佐倉くんに並んで歩き出す。


「にしても今日は朝から不運すぎたねー・・・通行規制してるわ坂田先生に捕まって放課後つぶれるわでさ・・・」

「ていうか、朝から思ってたんだが」

「うん?」

「俺ら8時40分には間に合ってたはずだよな。なんで坂田先生に見つかったのか不思議だったんだ」


 腑に落ちない、って感じで佐倉くんは顎に指をかけた。


「まあ今日はたまたま早く見回ってたとかじゃないの?」

「その可能性もあるけど・・・坂田先生、朝の情報番組を見ながら事務作業をするのが日課なんだ。その番組が、8時40分終了でな、基本的に8時40分より前に見回りなんかしないはずなんだ」

「・・・詳しすぎない?」


 まじでスポーツ選手やん。
 敵の情報収集も戦略には必須ってか?

 私はさすがに詳しすぎて若干引きそうになったけど、気を取り直して会話を続ける。


「・・・じゃあなんか今日は特別な理由があったとか?」

「たぶんな。でもその理由がわからないと困るな」

「なんで?もう終わったことじゃん」

「今後いつ8時40分の見回りじゃなくなるか予測できないだろ」


 そこまで必死に情報集めるくらいなら混んだ朝のバスに我慢して乗れ。
 と、突っ込みたくなるほどの気概だ。

 まあまだ今日初めてがっつり話したくらいの仲だから言わないでおいたけど。


 そうこう話している内にバス停が見えてきた。
 けど時刻表を確認するも、ちょうどつい数分前にバスが発車してしまったようで。


「バス確認してから出ればよかったねー・・・次40分後か・・・」


 田舎は辛いよ。
 仕方なしにバス停のベンチに腰掛け、時間を潰すことにした。


「せっかく木曜日で部活ない日なのにさ、ほんと不運だよね・・・」

「ああ」


 まあ私はもう数日間部活がない日を経験しているわけだけど。

 にしてもループが終わったら部活のブランクはどうなるのだろう。
 ループした日数分ブランクがたまっているのか、はたまた一日分なのか・・・。


(・・・まあ考えても仕方ないからいっか・・・)


 そんなのはループから無事脱出できてから考えることだ。


「佐倉くんってそういえば何部だっけ?」

「剣道」

「すご、なんか似合う」

「・・・日野は吹奏楽だったよな」

「え、知ってたの?」


 私は佐倉くんが何部かなんて全く把握してなかったので、佐倉くんが私の部活を把握していることに驚いた。


「何回か、黒いリコーダーみたいなのもってるの見かけたから」

「ふふっ、黒いリコーダーって言い方・・・、クラリネットっていうんだよ、あれは」

「クラリネット・・・」


 部活の話をしていてふと、天ヶ崎くんはサッカー部だったよなぁ、と頭によぎる。
 そしてそれに続いて、妙案がよぎった。


(・・・よく考えたら佐倉くんって天ヶ崎くんと仲いいわけだし・・・もしかしたら天ヶ崎くんの有力情報をもっているかも・・・!?)


 この手を逃してはならない。
 今回は告白すらしてないんだから、せめて情報収集にくらい精を出しておくとするか。


「・・・ね、あの・・・」


 妙案を実行に移すべく話を切り出そうとしたのだが、どう切り出したものか。

 今の流れで急に天ヶ崎くんの名前だすのはさすがに変だ。
 かといってだらだらと機を待っていたらバスが来てしまうし。

 佐倉くんは相槌をうつでもなく、かといって興味なさげにするでもなく、ただ静かに私が話し出すのを待っていた。


「えーっと・・・職員室でさ、あの・・・話したじゃん、あの、・・・あのこと」

「・・・清翔のこと?」


 佐倉くんは一瞬困ったような顔をしたけど、すぐに察してそう聞いてきた。


「そう、それについてなんだけど、あのー・・・えっとー・・・・なんて言えばいいかな」


 私はしばし迷った末、天ヶ崎くんに好意があることを素直に認めることにした。

 どうせここで佐倉くんにバレたところで、また次の日になれば佐倉くんはきれいさっぱり忘れているわけで。
 恥ずかしいとか、言いふらされるかもとか、そんな感情抱くだけ無駄ということだ。


「まあ言っちゃうと・・・す、好き、なんだよね、あの、うん、その人が」


 周りに誰もいないとはわかっているし、例え誰かに聞かれたところでリセットされるんだけれど、なんだか恥ずかしくて私はごまかすようにそう言った。


「そう。まあ、なんとなく知ってたけど」


 佐倉くんは職員室でもそんなことを言っていた。
 よく見つめているからつい、って言っていたか。

 佐倉くんはよく天ヶ崎くんといっしょにいるから、私の視線に気づいたのかもしれない。


(・・・ちょっと待って、それでいくと天ヶ崎くんも私の好意に気づいている可能性が・・・)


 その可能性に思い至ったとたん、私は恥ずかしさでいっぱいになった。
 いや全く好意がバレてないよりかは若干バレてるくらいのほうが告白が成功しやすそうだし、まあ結果オーライだ・・・と、思う。思いたい。


「あの・・・それでさ、私、天ヶ崎くんに告白しようと思っててね」

「・・・そうなのか」

「うん、あの、でも絶対このままだと無理だと思うんだよね」

「・・・それはまだわからないだろ」


 わかるんです、これが。
 見事にもう三回ほど振られてます。


「お、女の勘ってやつだよ。でさ、佐倉くんって天ヶ崎くんと仲いいじゃん」

「まあ」

「あのー・・・なんか、もっとこうしたほうがいいとか・・・天ヶ崎くんはこういうのが好きそうとか・・・なんでもいいのでアドバイスをお願いできませんか・・・」

「アバウトだな・・・」


 佐倉くんは少し困ったように空を仰ぎ見た。
 しばらく、5分ちょっとはそうやって静かに考え込んでいただろうか。

 そしてその後ようやく私のほうを向き、口を開く。


「・・・ごめん、わからない」


 ずっこけそうになった。
 あれだけ考えても何も出てこなかったんか。


「ほ、ほんとに何もないの?」

「・・・もともとあんまり俺らの間で恋愛の話をしないっていうのもあるけど・・・、清翔は今のとこ恋愛に興味なさそうなんだよな」

「・・・あー・・・」


 誰とも付き合う気はないってやつ。
 もうお手上げだ、それじゃあ・・・。


「まあでも日野はいいやつだし、今すぐは無理でもいずれ清翔が恋愛に興味持ちだしたらきっとチャンスあると思う」


 今じゃないとだめなんだけど。
 いずれじゃ困る、今興味持ってくれ、天ヶ崎くん。

 心の中で届かぬ祈りを叫ぶ私。


「うーん・・・じゃ、じゃあせめてさ、この際佐倉くんから見てでも構わないからさ、こう、ぐっとくる告白ってなんかないの?」

「え、俺?」


 佐倉くんが少しだけ動揺した。
 少しだけ、視線をさまよわせる。


「・・・す、好きって言ってくれたら・・・それで十分、だけど・・・」


 少し動揺を見せつつも答えてくれた佐倉くんだったけど、正直私としてはそんな回答じゃ物足りない。

 好きって伝えるのは基本中の基本。
 さすがの私も毎回の告白でそれぐらいはちゃんとやったうえで振られている。


「他には?他にはないの?」

「えっ・・・いや、ない」

「アドバイス少なすぎ!っていうかその場合佐倉くんは好きって言ってくれたら誰でもOKってことになっちゃうけど?」

「えっ、違う、そんなことない」


 佐倉くんが私の追求に少し慌てた。


「じゃあ何?他に何を言ってほしい?」

「も、もともと俺も気になってる人なら好きって言ってくれるだけで十分って意味で・・・好きって言われたら誰でも付き合うわけじゃないから・・・」

「・・・なるほどね」


 つまり、眼中にない相手だったらなんと言われようと付き合わない、と。

 だとしたらやっぱり私終わってない?
 天ヶ瀬くんの眼中に入っている気がしないから。


「・・・うーん、じゃあもうどうすればいいの・・・」

「・・・気長にいけばいいと思うぞ。清翔もすぐに気が変わるわけじゃないだろうし。時間かけて振り向かせたらいいんじゃないか?」

「・・・そうだねぇ・・・」


 私は気のない返事を返した。
 ちょうど遠くからバスがやってくるのが目に入る。

 私は立ち上がって、ぼんやりと気のおもむくままに口を開いた。


「・・・晩御飯、カレーかぁ・・・」

「?」

「・・・四日目のカレーってどう思う?」

「・・・カレーは二日目がうまいと思う」

「うーん・・・そうだよねぇ・・・、二日ぐらいで十分だよねぇ・・・」

「?」


 時間かけて、とか悠長なこと言ってる暇はない。
 早くこのループから抜け出さなければ。