7月15日、あなたに告白します。

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 私はバスを降りた瞬間、戦闘態勢に入った。
 絶対に始業に間に合わせる!と意気込む。


「よし!行こうっ、佐倉くんっ!」

「え」

「え?」

「・・・いっしょに、行くのか?」


 同じ戦いを挑む者、いわば戦友のようにすら思っていた佐倉くんが、そんなことを言ってきた。


「い、行かないの!?逆に!行き先は同じなのに!」

「いや・・・」


 佐倉くんは珍しく少し言いよどんだ。


「・・・てっきりもう話しかけてもらえないかと思ってたから」


 なんてネガティブな・・・。
 別に特別親しくはないけど、かといって不仲ってわけじゃない。
 それなのに会話もせず同じ方向に歩き続けるのは、むしろ気まずい気がする。


「そんなわけないじゃんっ!それより話は後!遅れるから行こっ!」

「あ、ああ・・・」


 私は佐倉くんとともに走り出した。
 さっそくアドバイスされた信号が見えてきた。


「ここでは渡らないんだったよねっ」

「ああ」


 そこはスルーして、次の横断歩道を目指す。
 確かにいつもは余裕もって登校してるから気にならないけど、結構変わるの時間かかるもんな、あそこ。

 そして間もなく次の横断歩道が見えてくる。

 確かにこっちは信号がなく、それに車通りもほぼなさそうだった。
 おかげでちらっと左右を確認し、すぐに渡ることができた。


「だっ・・・大丈夫かな・・・っ、間に合うかな・・・っ」


 だんだん息があがってきた。
 一方の佐倉くんは、体力には自信があるのか涼し気な表情で腕時計を確認する。


「8時24分。いいペース配分だ」

「だからそれ・・・っ」


 スポーツ選手か!と突っ込もうかと思ったけど、走りながらしゃべるのは体力の無駄なのでやめておいた。


「・・・待て」


 佐倉くんが急に立ちどまった。
 何事かと彼を見ると、無言で前方を指さした。すると。


「・・・交通規制ぃ?」


 私は思わず言いながら顔をしかめてしまった。

 どうやら直前に事故があったらしい。
 これでは最短ルートが使えないではないか。


「・・・引き返そう」

「えぇ・・・」

「しかたないだろ」

「はい・・・」


 佐倉くんは淡々とした感じで引き返していく。
 私もこれ以上ここにいても何も始まらないので、後ろ髪ひかれる思いで佐倉くんに続いた。

 結局一つの前の角まで戻って、迂回ルートで行くことに。


「・・・もうこれ絶対間に合わないやつじゃん・・・」

「・・・だな・・・」


 時計は8時26分を示していた。
 ここからじゃもうどうがんばったって始業には間に合わない。


「・・・8時40分を目指そう」


 佐倉くんがそう言いだした。
 8時40分て、結局始業には間に合ってないですけど・・・。

 私の不思議そうな視線を受け、佐倉くんが説明してくれた。


「8時40分以降は、生活指導の坂田先生が見回りするんだ。これに捕まると放課後のお説教タイム確定だ」


 おい、やけに詳しいな。
 絶対これ捕まったことある奴だな、佐倉くん。
 それも一回や二回じゃないな。

 と、突っ込みたかったが、やはり体力の無駄使いのため何も言わないでおいた。


「じゃあ・・・っ、あと13分・・・!」


 13分なら、急げば間に合いそうだ。

 そしてそこから10分ほどかけ、ようやく学校が見えてきた。
 忍び足で校舎内に入り、授業中の教室の横を静かに通り過ぎていく。

 ここで気づいたけれど、上履きを履かず靴下のままで歩くと、足音が消しやすいのだ。
 もしかしてこれも見越して下足場に行かないのでは・・・?と佐倉くんの思考を邪推してしまった。


(よし!ここさえ通り過ぎれば――――)


 他の一年の教室を抜け、ようやくうちのクラス、と安堵したのもつかの間。


「おい、何してるんだ」

「!!」


 背後から、野太い声に呼び止められた。
 これは―――――。

 恐る恐る振り返る私。
 と、状況を一瞬にして把握し、己の死を悟った修行僧のように目をつむる佐倉くん。


「お前ら、二人仲良く遅刻か」

「・・・さ、坂田先生・・・」


 背後に立っているのは紛れもなく、あの恐怖の生活指導、坂田先生だった・・・。


「放課後、職員室に来なさい」


 この状況で、神妙な顔をしてうなずく以外の選択肢など、残されてはいなかった――――。