7月15日、あなたに告白します。

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 さあ、いよいよ来るべき時が来た。

 私はもう一度心の中で告白文を読み上げると、時計の針を見上げた。


(・・・確か一週目の告白のときは、16時20分くらいに天ヶ崎くんは来たはず・・・)


 ドキドキしながら時計を見上げる。


(・・・もうそろそろだよね、もうそろそろ・・・)


 じーっと時計を見つめていると、扉が開く音で意識が引き戻された。


「遅くなってごめんっ、ちょっと先生に呼び止められて・・・っ」


 前回の告白のときと同じく、少し息の上がった天ヶ崎くんが教室に入ってきた。


「ううんっ、待ってる時間も楽しいから・・・いいの」

「・・・ありがとう」


 天ヶ崎くんは少しだけ複雑そうな表情をしたけれど、お礼を言った。


「それで・・・話っていうのは?」


 よし、ここまでの流れはほぼ前回といっしょ。
 あとはこの台本を読むだけ・・・!

 私は授業時間を削って編み出した渾身の告白文を読み上げる。


「・・・実は、天ヶ崎君は覚えてないかもしれないけど、私、昔天ヶ瀬くんに会ったことがあるんだ」

「え・・・」


 天ヶ崎くんは少しだけ驚いたような表情をした。


「その時から天ヶ崎くんはかっこよくて、頼りがいがあって、優しかったよ。今と同じように」

「・・・・」

「天ヶ崎くんは私のこと、おしゃべりが苦手って言ってたけど、それは天ヶ瀬くんの前だと緊張しちゃうからなの・・・・。ほんとは、もっとしゃべりたいし、もっと天ヶ崎くんのこと知りたいし、もっと私のこと知ってほしいです」


 私は台本を閉じて、まっすぐ天ヶ崎くんの瞳を見つめた。


「私、天ヶ崎くんが好きです・・・!お試しでもいいので、付き合ってもらえませんかっ?」


 想像通りの完璧な告白だ・・・。

 桜の約束を天ヶ崎くんが忘れてしまっていることはもう一周目で確認済みなので、それを押し付けることはせず、しかしそれを説明しないと私が好きになった理由がわからない。

 そのため、昔知り合っていたこと、その頃から好きなこと、そしてどういうところが好きなのか、その三つの要素をすべて盛り込んだ完璧な告白文に仕上げたのである。

 満足する私に、しかし彼は残酷な答えを突き付けてきた。


「・・・えっと、気持ちはうれしいんだけど・・・」


 この流れ・・・嫌に既視感がある。
 そう思った瞬間、天ヶ崎くんが口を開く前に私は話はじめた。


「ま、待って!えっとー・・・そうだな、そうっ!天ヶ崎くんって誰かと付き合ったことあるっ?」

「・・・へ?」


 唐突すぎる話題転換に、天ヶ崎くんが怪訝そうな表情になる。
 しかし誠実な彼は、怪訝そうにしながらも答えてくれた。


「・・・な、ないけど・・・」


 まじか。
 とっさに出た質問だったけど、あの天ヶ崎くんが恋愛経験ゼロ・・・?


(・・・っそんなところも可愛いっ!!)


 思考が萌えに言ってしまう前に、私はあわてて咳払いをして、口を開く。


「ならっ!お試しでもいいのでっ!私と付き合ってみませんかっ!!」

「えっと・・・?」

「いっ、今ならなんとお付き合いだけじゃなく、いくつかセットプランをご用意しますっ!私ごときと付き合っていたことが周囲に知られないよう絶対に口外はしませんし、別れたいと思えば明日にでも分かれましょうっ、別れた後付き合っていたことをなかったことにしたいなら私の記憶をなんとかして抹消しますっ!!」

「え、えぇ・・・?」


 天ヶ崎くんは見るからに動揺していた。
 そりゃそうだ、このイケメンはきっとこれまで数えきれないほど告白されてきただろうけど、まさか告白中にお付き合いのセットプランを提示されることなんてなかっただろうから。


「だからっ!どうか私と付き合ってくださいっ!!」


 私はもう完璧な告白なんて理想をかなぐり捨て、ついでに恥も外聞もかなぐり捨てて、全力で頭を下げた。


「えっと・・・ご、ごめん。今は誰とも付き合う気がなくて・・・」


 結局はなぐり捨てられた私の理想と恥と外聞は無駄な浪費となり、天ヶ崎くんは私を振った。
 しかも若干一周目より引き気味ではあったけど、一周目と同じセリフで。

 けれども私は二度目だからか、それともまたチャンスが巡ってくることがわかっているからか、かなりショックは浅く。

 振られた次の瞬間には立ち直り、考えを巡らせていた。


(ということは明日また7月15日を繰り返すわけで・・・振られた私にできることは、次の周に向けて動き出すことのみ・・・!)


 そうと決まれば後は早い。


「天ヶ崎くん!じゃあ最後にいくつか質問してもいい!?」

「え・・・・い、いいけど・・・」


 もう若干引き気味ってレベルじゃなかった。
 かなり引いていた。

 確かに振られた次の瞬間けろっと話を始める人なんて私くらいだろう。


「天ヶ崎くんのタイプってどんな人ですかっ!?」

「タ、タイプ・・・!?考えたことなかったけど・・・そ、そうだな・・・」


 天ヶ崎くんは困ったように視線を行ったり来たりさせたのち、私のほうをちらっと見た。


「・・・と、年上」

「年上・・・・」


 天地がひっくり返っても無理な回答が来てしまった。
 いやむしろ天ヶ崎くんは私に余計な期待を持たせないよう、あえてそう答えたのかもしれない。


「・・・じゃあ、好きな髪形は!?」

「えぇ・・・えっと・・・、み、短めが好き、です・・・」


 私は自分の髪を見下ろす。
 胸元くらいまであるロングヘア。


「・・・じゃあ、どういう告白がうれしい?」

「・・・告白は僕からしたい、かな・・・」


 私は自分の手に握られていた告白の紙をくしゃっと丸めた。


「・・・じゃあ、んーと、好きな仕草とかない?」

「仕草・・・よくわからないけど・・・、わ、笑ってる人のほうが魅力的かな・・・」


 私はそれを聞いて、大きくうなずいた。


「わかった。次の私に期待していてね、天ヶ崎くん」

「・・・・次・・・とは・・・?」


 はてなマークを飛ばす天ヶ崎くんを置き去りにし、私は帰路に就いた。