「……ミツルと付き合って確かめるってこと?」

「そのつもりで言うたけど」

ああ、やっぱり口説いてくる。

私は小さくため息をつき、電話したことを後悔してた。

面倒くさかった。少し前の私なら「マコトなんてやめて……」と、ミツルと付き合うことを視野に入れてたかもしれんけど──

“ごめんなさい”

数ヵ月前の、謝ってた自分が頭の中をよぎる。

「……ミツル、そういうとこやで」

同じことを繰り返すのはもう嫌や。

迷うことなく、軽いノリでミツルの言葉を聞き流した。

「そういうとこって?」

「簡単に口説いてくるから軽いって言うてんの」

「……だから試してみるかって聞いてんやん」

「美容師がどうこうじゃなく、ミツル自体が軽いってことはもうわかったよ」

はっきり伝えると、ミツルは「ふうん」とつぶやいて。

「ハイハイ。わかったよ」

口説くのをやめたようやった。


その後もミツルは話し相手になってくれたけど、その声からは眠たさが伝わってきてたし、私は準備を済ましてたけど、「準備する」というて電話を切った。