side.イスファーン

邪魔ものは全て片付けた。
ルラーンは滅亡。
みんな死んだ。俺の母親もイリスの家族も、目障りな馬鹿王子も。
「ご機嫌だな」
転がった三人の生首をゴミ箱に投げ入れているとエリシュアが来た。
「当然でしょう。念願が叶ったんだから。エリシュアだってご機嫌じゃない」
「当然だな。ルラーンが手に入ったんだから」
俺は馬鹿王子の首を持ち上げてゴミ箱に投げ入れる。これでお掃除は完了だ。
「俺は帰るよ。イリスが待ってる」
「ああ」

◇◇◇

side.イリス

ルラーンが滅んだ。
私を、というよりもイリスを苦しめた元凶が全てこの世から去った。
「イリス、イリス。これでやっと本当の意味で二人きりだね」
ベッドの上で寝転ぶ私を抱きしめてイスファーンは嬉しそうに言う。
どういうことだろう。
こんなのシナリオになかった。
だってヒロインであるアリシアが死ぬなんて誰が予想できる。
「イリス、何を考えているの?俺といる時に俺以外のことを考えないでよ」
拗ねるイスファーンは甘えん坊の犬に見える。可愛い。
ヤンデレだけど。
イスファーンの頭を撫でると彼はとても嬉しそうに笑う。
ヤバい。
彼に毒されている。可愛いと思って構いたくなるのはかなりまずい証拠よね。
正直、両親のこともアリシアのこともエーメントのこともルラーンのことも、イスファーンから聞かされてもなんとも思わなかった。
イリスが彼らに嫌気が差して見限ったっていうのもあると思うけど何よりも私が本当の意味でイリスではなくなったからだと思う。
前世の記憶が戻った私はどちらかというと前世の人格が強く出ているし、彼らに対して何の情も持っていないからだ。
「イリス、愛してる。君だけを永遠に愛してる」
そう言ってイスファーンは私の顔中にキスをする。
これだけ愛されていれば絆されるのも当然だろう。
ちょっと怖いし、バッドエンド感も否めないけど私はイスファーンのことが嫌いじゃない。寧ろ好ましく思っている。
監禁とかは嫌だけど頑張れば譲歩してくれるのは立証済だし、悪くはない。
「イスファーン、私もあなたのことが好きよ」
私がそう言うとイスファーンはとても嬉しそうな顔で笑う。ちょっときゅんとなった。