そんな場違いなことをルーチェは考えてしまった。何も言わずに考え込んでしまっていたため、ティムに「大丈夫?」と訊かれ、ヴィオレットには「少し休んだ方がいいんじゃないかな?」と心配されてしまった。

「大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけ」

「もしかして、この本に関することか!?」

ルーチェの咄嗟の言い訳にアーサーが食いつく。ルーチェはゆっくりと頷き、ヴァイオレットの方を向いた。

「ヴァイオレットさん、共鳴していた時のことを教えてください」

「はい。もちろんお教えします」

ヴァイオレットは少し緊張した様子だった。全員の目が彼女に向けられているというのもあるかもしれない。イヴァンがヴァイオレットの緊張をほぐすかのように彼女の手を握る。ヴァイオレットは頰を赤くした後、話し始めた。

「とても怖かったです。私は暗い場所にいて、目を開けることができませんでした。何十人もの人の声がしていて……」