それは一瞬の出来事だった。

突然、強い風が室内を襲った。まるで嵐でも起こっているかのような風だ。ノアとエレノアが悲鳴を上げ、クロードとルカは妻が吹き飛ばされないよう抱き止める。

(あの本から風が出ている!)

ギルバートの手にある本から黒い光の粒子を含んだ風が出ているのが見えた。ギルバートは本を閉じようとするものの、閉じることができないようだ。

「ルーチェ!」

クラルが叫ぶ。彼の方を見れば、クラルの体は地面から浮いていた。そして本の中へ一瞬にして吸い込まれていく。

「クラル!」

ルーチェが叫んだ刹那、ふわりと体が浮く感覚がした。それを自覚した刹那、強い力で引き寄せられていく。

「ルーチェ!!」

そう呼ぶ声がしたが、ルーチェは振り返ることなどできなかった。