様々なことを乗り越え、幸せを手にすることができたヴァイオレット・カッシング改めヴァイオレット・ブルースターは、アイリス・ブレイディとミモザ・ワトソンに着替えとメイクを施されていた。

「二人とも、そこまでしなくても……」

二人の張り切りように戸惑うヴァイオレットだったが、「ヴァイオレット、しっかりおめかししなきゃダメ!」とミモザに強く肩を掴まれる。

「せっかくイヴァン様と両想いになれたんだから!しっかりおめかしして惚れ直させなきゃ!」

「ミモザの言う通りね。他の女に目移りしないようにおしゃれしなきゃ!」

そう言う二人の手には、マスカラや口紅などの化粧品が握られている。二人の目はギラギラと輝いており、ヴァイオレットは少し恐怖を感じながら言った。

「イヴァン様は目移りするような人じゃないわ」

ヴァイオレットの夫であるイヴァン・ブルースターは、このウィロウ地方の領主であり、この国の次期国王であるフェリシアーノ・アルストロメリアやその側近であるサクラ・スエミヤとオリバー・グリーンと友人という関係である。そんな彼は世間で恐怖の対象である人狼だ。