淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~

それもそのはず。
金山さんのご主人は、今まだ意識が戻っていないから。

面会しても話すことは出来ないし、かといって帰すのも申し訳ない。

中には「せっかく来たのに会えないなんてひどすぎる!」と、怒りながら帰ってしまう人もいる。だからこそ、ここで納得してもらえるような返事をしなければならいのだが、それが意外と難しかったりもする。


「金山さん、おはようございます。昨日、緊急で手術をさせていただきました、主治医の岡林です」


俺がそう声を掛けると、金山さんは視線をこちらに向ける。

そして、花束を抱えたまま深々と頭を下げた。


「あぁ……岡林先生、昨日は本当にありがとうございました。おかげ様で、主人を失わずに済んで……」
「いいえ。患者さんを助けるのが仕事ですから」

「もう、本当に感謝しかないです。それで、主人に会わせていただけませんでしょうか?」


目に薄っすらと涙を浮かべている金山さんは、俺にそう訴える。

面会許可をしたいのはやまやまなのだが、ここで許可を下すと全員の意見を通さなければならなくなる。


「金山さん。今、ご主人は治療を頑張っておられます。ご主人も元気になってから会いたいと思いますよ」
「……そうですかね」

「はい。すぐ元気になります。そうなったら金山さんにお伝えしますので、もう少し待っていただけませんか?」