私には、高校に上がってからずっと好きな人がいる。
同じ部活の高橋理玖くんだ。彼の好きなところはたくさんあるはずなのに、よく分からない。でも、それが恋なのだと思う。なんだか恥ずかしくて、友だちにも言っていない。そんな状況がもうすぐ3年目に突入しようとしている。3年生になれば、本格的に受験勉強が始まる。特進クラスの理玖くんは尚更だ。だから、なるべくはやく告白しないと!でも、なにかキッカケがないとチキンな私は告白なんてできない。直近でなにかイベントはないだろうか?そう思い、カレンダーをめくると4/1が目に止まった。特に何も記載はされていないが、この日はエイプリルフール、つまり嘘をついてもいい日だ。この日だ!と思った。だけど、4/1は部活どころが学校も休みだ。つまりそれまでに理玖くんの連絡先を教えてもらわないといけないことになる。
明日は月曜日、部活はある。明日しかない。ダラダラしている時間はない。明日は絶対に話しかけると心に決め、眠りについた。
翌朝、早めに起きてしまった。緊張のあまりよく眠れなかったのだ。
「くまできてないかな?大丈夫?」
と何度家族に聞いたことか。家族は事情を知らないので少し鬱陶しがられた。その日の授業内容は全く覚えていないし、聞いた記憶がない。だって、好きな人の連絡先を今日聞くのだ。直接。好きバレとほとんど同じなのではないか?などと考えていたことしか思い出せない。
そして、放課後、私は理玖くんの教室に行き、彼が出てくるのを待った。
理玖くんが出てきた。偶然を装って話しかけた。
「あ!理玖くん。偶然だね、今から部活行くの?」
「あ、優花さんも今から行くの?」
これは一緒に行けるのでは?
「うん!今から行くところ」
頼む、誘ってくれ。
「そうなんだ、一緒に行く?」
もちろん行くに決まっている。
「え!いいの!行こう!」
部活の活動場所は、徒歩で約10分の体育館だ。到着までになんとか連絡先を手に入れる。手に入れたいのに、中々勇気が出ない。あともう100歩も歩いたら体育館に着いてしまう。もう今言うしかない。
「理玖くん!連絡先交換しない?」
言い訳も思いつかなかった。
「あれ?そうだっけ交換してると思ってた。QRコード出すからちょっと待ってね。」
無事交換できた。私はもう少し頑張ることにした。
「今日連絡してもいい?」
「うん!大丈夫だよ。待ってるね。」
やっぱり理玖くんは優しい。そういうところが好き。
その夜。メッセージを送った。
「理玖くん!今日一緒に部活行けて嬉しかった!いつも1人で行ってるの?」
ドキドキしながら送信ボタンを押す。すると、意外にもすぐに既読が付き返事が返ってきた。
「いつも1人だよ。優花さんも1人なの?」
そのままたわいもない話をして、もう24時を回っているし、寝ようかとなり、会話は終わった。
その後、理玖くんとはメッセージもしず、学校でもなかなか会えずつまらない日々を過ごしていた。そのまま春休みが始まった。
1度メッセージを送ってみたけど、あまり盛り上がらず、エイプリルフール当日を迎えてしまった。エイプリルフールには約束がある。それは嘘をついても良いのは午前中のみで、午前中についた嘘は午後に言わないといけないというものだ。
私が起きたのは11時。午前終了まで後1時間。頭もろくに回らないまま、理玖くんとのトーク画面を開きこう送った。今から電話できない?と。
返事は大丈夫だよ。だった。
すぐにかけた。彼も出た。
「もしもし。どうしたの?」
「私今から嘘つくね。」
私は何を言っているのだろう。
「あ、そっか。今日はエイプリルフールか。嘘楽しみだな。」
「私、理玖くんのこと嫌いだよ。大嫌い。」
「え、」
「ごめん、困るよね」
「僕も嫌いだよ。優香さんが僕に思うよりもずっと。」
「それは嘘?ほんと?」
12時なった。
「嘘だよ。学校近くの駅で待ってる。嘘じゃないなら来ないで。」
そのまま電話を切られた。嘘ということは好きということなのだろうか。いや。違うかもしれない。でも、待ってるってどういうことだ。まだ頭が回らない。だけど、
「行かなくちゃ!!」
歯を磨いて、髪はとりあえず一つに結んで、服もあまり考えずに家を出た。
カフェにはもう既に理玖くんが居た。
「ごめん!お待たせ!」
「ううん。全然待ってないよ。こっちこそ突然呼び出してごめんね。」
「それは全然大丈夫!休みの日なのに会えて嬉しい。」
「僕、優花ちゃんのことが好きなんだ。付き合ってほしいです。」
私は泣いていた。この言葉をどれだけ待ち望んでいたことか。答えは決まっている。涙でベタベタな顔の口角をなんとかあげて答えた。
「はい!よろしくお願いします!私も理玖くんのことが大好きです!」