君との会話

コツコツ。

ある街のはずれにある商店街から杖の音が聞こえる。

よし!今日も幸せ!私がなぜそんなことを思うのか。

それはね、ある理由が関係しているんだ。

遡ること、1年前になるかな。

1944年。溶けそうに暑い夏だった。夜、夕飯時に空襲は起こった。

ドォォォン!

遠くで爆弾の音がしたから、家族みんなで家の庭にある防空壕に駆け込んだ。

止んだ、と思って外にでると街は炎に包まれていた。

「焼夷弾だー!川へにげろ!」

誰かの声が響き渡り、それを聞いた私達は一目散に川へ向かった。

でも、避難している人が山程いて、私とお父さんお母さん、弟ははぐれてしまった。1人残った私は、よくわからず無我夢中で叫びまくった。

「お母さん!お父さん!風(ふう)!」


いくら、大声を出しても私の大声は静かな夜の街に消えていった。


ドシャッ!

ドシャッ!

炎のせいであちらこちらでものが落ちてきた。

ドシャッ!

まずい落ちる、と思ったがもう遅く、家の屋根が私の足を目掛けて降ってきた。私は、反対にそれを見たくないかのようにギュッと目を瞑った。


朝日の光で私は目を開いた。

目の前の光景は、14年間生きてきたなかで、最もひどい状態だった。

目眩に襲われながらもとにかく逃げようと思い、足を動かそうとしたら左足は動くけれど右足はビクともしなかった。