いつものように、リビングのソファの左端に腰かけると、「ん」と蒼空がオレンジジュースのグラスをローテーブルの上に置いてくれた。

「ありがと」

 わたしの右側に蒼空も腰をおろすと、レコーダーのリモコンを操作する。


 前は十センチだった距離が、今は三十センチ。

 そんな小さなことに、ツキンと胸が痛む。


「え、ちょっと待って。蒼空もまだ観てないじゃん」

 番組タイトル横の『未』の文字を、わたしは見逃さなかった。

「別にいーだろ。ずっと部活が忙しかったんだよ」


 わたしと観るのを楽しみにしてたから……なんて理由なわけない、か。